世界の潮流が、日本のモノづくりに追いついてきた ~世の中になかったモノがIoTに変革を起こす~

マシンオートメーションコントローラNX701

モノづくりの最前線、工場を中心に世界的に高まる、あらゆるモノやサービス、情報を連携させて生産革新を起こそうという"IoT(モノのインターネット)"導入の動き。

しかし、日本のモノづくり現場では、"IoT"といった言葉が一般的に使われるようになる前から「データを集めて・分析して・改善につなげる」モノづくりは当たり前であり、この改善の積み重ねが、ジャパンクオリティを世界的なブランドとしてのポジションに押し上げてきた。

例えば、細かく生産状況の管理が必要となる半導体の生産プロセスでは、温度、圧力、ガスの流量など、種類の異なる大量のデータが扱われ、効率が最も厳しいと言われる自動車の生産プロセスでは、機械が壊れる前に計画的に部品交換できるよう大量のデータも活かされてきている。

製造現場のあらゆるデータを取得したいといったニーズは、10年も20年も前から存在していた一方で、データが増えることで複雑で分かりにくいシステムにしたくないし、当然ながら製品の性能や生産の効率も上げていきたいといった声も大きくなっていた。 その背景には、モノづくりを取り巻く環境の変化がある。 ニーズが多様化し、それに応えられるだけの製品ラインナップが求められる。製品のライフサイクルは短くなり、毎年新商品を出さないと生き残れない。市場はグローバル化を続け、工場も市場に近いところに進出が進んでいる。労働人口は減少し、熟練工も世界中で不足、技術の伝承や労働力の確保も課題になっている。

自動車工場の生産ライン

自動車工場の生産ライン

市場の変化に追従するために、モノづくりに求められるものは何か?

突き詰めていきついたのが、従来型のコントローラの枠組みを越え、情報通信技術(ICT)とファクトリーオートメーション(FA)を融合できる、これまでの性能から頭2つ抜き出た処理スピードをもつ、統合型コントローラというコンセプト。

機械を正確に高速に動かしながら、大量のデータをやりとりするには、処理が超高速でなければならないし、超高速で性能に余裕が生まれれば、複雑なシステム構成が1台のコントローラで全てをまかなえるシンプルなシステムとなる。

これこそが、現場に眠るデータに息吹を与え、誰でも、どこでもシンプルに使いこなせるシステムの核になると確信した。

世の中に、IoTやインダストリー4.0が知られていない頃、次世代コントローラ(NX701)の開発プロジェクトがスタートした。

目指したのは、これまでの進化の延長線上にはない、1万分の1秒(100μs)レベルでコントロールされる、業界では他に類をみない世界。
それは、最速のインテル®CoreTM i7プロセッサー(クアッドコア)を搭載し、圧倒的なスピードへの新たな挑戦となった。

踏み入れたことのない開発領域

踏み入れたことのない開発領域

一般の方からは想像しにくいかもしれないが、家庭用パソコンで使われているプロセッサーは、そのままモノづくりのFA用コントローラで使うことはできない。
家庭用のパソコンなら0.1秒フリーズしても、気づかなかっただけで問題にならないが、工場では大問題。機械は急に止まってしまい、故障や、不良品の原因になる。

モノづくりには、モノづくりのために自社で専用開発した部品を使うのが常識だったが、その常識を破り、インテルプロセッサーへの切り替えを決意した新商品を発表したのが2011年。
今回はさらに難しい挑戦が求められることは、最初誰もが想像しなかったことだった。

「これまでの1/4となる125μs の処理スピードでモノづくり現場でも安定して使えるようにするには、更に短い100万分の1秒台のプロセッサーの動きを理解する必要があります。しかも今回はマルチコアの特性を最大限引き出しています。インテル様にとっても未知の領域への挑戦になったと思います。モノづくりの現場では、なぜこのような性能が必要なのか、理解を得ながら共に開発を進め、モノづくりの現場で求められる堅牢性に耐えうる仕様に仕上げることができました。」そう語るのは、ファームウェアの開発を担当した緒方と江口。

開発を担当した緒方(左)と江口(右)

開発を担当した緒方(左)と江口(右)

そして、もう一つ製品化で重要だったのが、小型化。
インテルプロセッサーが入った超高速コントローラというと、大型のパソコンのようなものを想像するかもしれないが、モノづくりの現場では、大きいものは使われない。ムダを排除したものづくり現場では、装置や工場のスペースも有効に使うことが不可欠になっている。

NX701 CPUユニットの一部

NX701 CPUユニットの一部

ハードウェア開発を担当した東は、「従来のコントローラを使われていたお客様が、大きな変更なく使えるくらい小型化しようとすると、どうしても高密度な回路になり、熱の問題が出てきます。パソコンもそうですが、CPUが熱を持つと動作が遅くなりますよね。モノづくり現場で通用させるためには、周囲温度55℃まで動作保証し、処理スピードを守らないといけない。そのための熱シミュレーション、高周波回路設計技術は徹底的に突き詰めてきました。回路図だけ手に入れて真似して作っても、他では動くものは作れないくらい、ノウハウが組み込まれています。」そう、当時の苦労を振り返った。

開発時を振り返る担当者たち

開発時を振り返る担当者たち

ICTとFAが融合すると、"人と機械の新たな協調"が生まれる

プロダクトマネージャーの倉田

プロダクトマネージャーの倉田

時代の先を見据え、苦労を乗り越えて世に送り出した業界最速のコントローラ「NX701」。
2015年4月にリリースして以来、緻密さや安全性、そして徹底的に効率が追及される電気自動車やスマートフォンに使われる主要部品の次世代製造装置で動き始めている。
その中で40台以上の機械がずれなく同期して生産性が最大化されて動いている様は、まさに圧巻。
今までは難しかった、製品一つひとつがどんな条件で作られているのか、品質に関わる前後の工程の情報が、因果関係が分かるまで管理されている。

そして、時を同じくし、IoTやインダスリー4.0といったモノづくり旋風が日本でも巻き起こる。時代が、日本のモノづくりの考え方に追いついてきた。

「こんなに速いコントローラなんて本当に必要か?という議論も当時は確かにありました。しかし、私は『機械にできることは機械に任せ、人はより創造的な分野での活動を楽しむべきである』というオムロンの哲学に共感しています。

機械は人の替わりではないかという人もいます。もちろん、機械が人の替わりとして、人以上に素早く間違いなく長時間危険な場所でも作業してくれる側面はあります。しかし、機械が、人が培ってきたノウハウをデータとして蓄積して、理解して動いてくれたり、機械が改善のヒントを人に与えてくれたりする未来の製造現場が、今まさにお客様が抱えている課題の延長線にあると見えたとき、これはモノづくり現場を変革する商品になると確信しました。

緻密な動作が何倍も速くなれば、今まで作れなかった目に見えないものまでも高速で作れるようになり、大量のデータを高速に分析・フィードバックすることが、現場ノウハウの見える化やAI(人工知能)につながり、機械と人の関係性が大きく進化していく。

NX7がフラッグシップになり、未来が広がっていくと考えています。」

社内の疑問に対し、着々とお客様の声を積み上げ、その先に未来を描いてきたプロダクトマネージャーの倉田は語る。

わたしたちが目指しているのは、モノづくりに関わる方々とわたしたちの技術や知見を融合させることでモノづくりが革新されて、世界中の人々の生活が豊かになる未来。

機械をもっと賢く、人の能力を引き出す新たな関係に向けて、わたしたちの挑戦はこれからも続きます。

■日本の製造業課題を解決するオムロンFAソリューションサイト

マシンオートメーションコントローラ「形NX701」は、日本経済新聞社が主催する「2015年日経優秀製品・サービス賞」において、「優秀賞 日経産業新聞賞」を受賞しました。
「製造現場でIoTやビッグデータ活用が広がる中、形NX701が処理速度などの性能を大幅に高めたことで、そうした時代のニーズに柔軟に対応でき、IoTなどが活用される次世代型の工場の広がりに貢献することが期待できる」点が評価されました。
■日経優秀製品・サービス賞の受賞について詳細はこちら

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