環境保全と事業成長を両立するモノづくりを、中国全土にまで広げたい

~めっき汚泥処理設備の改良で、年間225トンもの産業廃棄物削減に貢献~

産業の発展が人々の生活を豊かにする一方で、排出される産業廃棄物の量は増加の一途をたどっています。2000年に約127億トンだった世界の産業廃棄物は、2050年には約270億トンに達するとの予測*¹もあり、産業廃棄物削減は世界が抱える課題の一つになっています。オムロンは、2022年4月からの長期ビジョン「Shaping the Future 2030」をスタート。「カーボンニュートラル社会の実現」に向け事業をつうじた「脱炭素・環境負荷低減」に取り組んでいます。中国にある電子部品事業の生産拠点オムロン深圳工場でも、環境負荷低減に向けた活動を推進しています。

*¹ 「世界の廃棄物発生量の推計と将来予測 2020年改訂版」(株式会社廃棄物工学研究所)
https://www.env.go.jp/council/34asia-univ/y340-01/mat04-2.pdf

 

事業拡大と共に増える産業廃棄物の削減にチャレンジ、競争力強化へ

リレー、スイッチ、センサーなどのデバイスを生産するオムロン深圳工場は、中国深圳市の東部に位置する坪山区にあります。オムロン深圳工場を含めた同エリア内にある数々の工場では、経済成長に伴い工場から排出される産業廃棄物の増加が課題となっていました。2019年春、この課題に同工場の安全環境部を中心にメンバーが立ちあがりました。まず、工場内で排出されるあらゆる産業廃棄物を分析。廃棄物全体の20%を占めるめっき汚泥に着目し、汚泥処理設備の改良をスタートしました。
「事業をつうじて社会的課題解決に貢献する、同時に競争力を高めて事業成長を図る、そのために私たちは率先して取り組むべきだと考えました。」と安全環境部の鐘承暁 (ジョン・チェンシャオ)は当時を振り返ります。

 

約100回もの試行錯誤を経て、めっき汚泥の含水量を最小化する手法を考案

オムロン深圳工場では、電子部品のサビや劣化を防ぐため金属素材の表面部に溶液を浸して、金属の薄い膜をコーティングするめっき処理を施します。めっき処理後の工場排水は、ニッケルや銅、シアンなどの有害物質を含みます。これを河川に放流できるレベルにする工程で発生するのが、めっき汚泥です。これまでオムロン深圳工場では、フィルタープレス*²という脱水装置でめっき汚泥の含水量を95%から限度70%にまで下げてから、産業廃棄物として処理していました。
「含水量を減らすことができたら、めっき汚泥の量はさらに減らせるのでは。」と考えたのは、スイッチ&コネクター統括部の譚通貴(タン・トングイ)をはじめとするめっき工程の担当者たちでした。既存の装置のどこに改良を加えれば、脱水効果を高めることができるのか、タンたちはフィルタープレスの構造や各機構の脱水プロセスを徹底的に解析しました。
「思いついたのが、ドライヤーのように泥を一気に乾燥させるという手法でした。そして、圧縮空気(エアー)を送り込む工程を追加することにしました。」(タン)さまざまな箇所に空気孔を開けて試行錯誤を繰り返し、乾燥効果を最大化させる工程を探し出し、乾燥機構とバルブを追加。さらに、もともと1つだった排水口を3つに増やすことで、汚泥による目詰まりを解消、めっき汚泥の含水量を30%にまで減少することができました。
「その後も分析を続ける中で、含水量がまだ高いところがあることに気づきました。『絶えざるチャレンジ』、オムロンが最も大切にする価値観のもと、メンバーはさらなる高い目標に向かって挑戦しました。」(タン)
メンバーは、ろ過工程の後部に圧縮空気を送り込むパイプを追加し、後ろからも空気を吹き付ける案を生み出しました。これにより乾燥効果が一気に向上。既存のめっき汚泥処理装置に改良を加えるだけで、業界の常識を覆す含水量15%を実現する高効率汚泥処理システムを完成させました。この結果、オムロン深圳工場におけるめっき汚泥の排出量は、2019年の19トンから2020年には9トンにまで減少。1年間で約10トンもの削減(前年比約50%減)を達成することが出来ました。圧縮空気を吹き付ける乾燥機能、排水口追加による汚泥水流の改善による最先端のめっき汚泥処理技術は、2022年に中国で特許を取得しました。*³

318_2.jpgオムロン深圳工場メンバーが生み出し、特許を取得した手法

*² フィルタープレス:ろ板で仕切られたろ過袋がいくつも並んだ構造。めっき汚泥をろ過袋に押し入れ、圧縮空気で圧力をかけて脱水する仕組み
*³ 特許:中国めっき業界において、めっき汚泥処理設備に水排出口の追加、圧縮エアで吹き付ける方法で汚泥乾燥を実現

 

エリア全体に広げ、坪山区で年間225トンの汚泥削減を実現

深圳工場メンバーは、「オムロンにおける廃棄物削減は、環境問題解決の一部にしかならない。自社で実現したサステナブルなモノづくりを坪山区、広東省、そして中国全土に広げたい。そして、社会全体の課題を解決したい。」と、新たなチャレンジに取組みました。メンバーは、工場のある坪山区生態環境局に対して、自らが生み出した汚泥処理技術を提案。区内にあるめっき企業を訪問し、ノウハウや削減効果の説明を重ねました。

318_3.jpg坪山区生態環境局に手法・技術を提案するオムロン深圳工場メンバー

オムロンのみならず他社でも、めっき汚泥を削減するために必要な改善・設備導入にかかるコストはネックでした。しかし、オムロンが生み出した手法は、既存のフィルタープレスに改善を加えるだけ。設備を新たに導入する必要はありません。最小限の投資で大幅な削減効果を見込めることから、オムロンと同じフィルタープレスによる汚泥処理を行っている8社すべてが本技術を導入することになりました。これにより、2021年坪山区で年間約225トンもの汚泥削減(前年比約40%減)を実現しました。
「環境への負荷を減らし、サステナブルなモノづくりをしていくにはどうすればいいか、課題を抱えていたのは、他のめっき企業も同じでした。われわれの手法・技術を導入することで、自社の廃棄物を削減することはもちろん、社会全体の環境負荷低減に貢献できる。そこに共感していただいたことが、導入につながりました。」と、安全環境部の黄英(コウ・エイ)は話します。
オムロン深圳の環境取り組みは高く評価され、2021年2月4日深セン市から「清潔生産優秀企業」として表彰されました。2021年4月には、深圳市めっき協会にもこの革新技術を紹介しました。今後は広東省、そして中国エリア全体にもこの取り組みを広げていく予定です。オムロンは、事業を通じて社会的課題の解決に取り組むとともに、培ったノウハウ・技術を中国・社会全体に広げる活動を進めていくことで、持続可能な社会づくりに貢献していきます。

318_4.jpg本テーマに取り組んだオムロン深圳工場のメンバー
左から、鐘承暁(ジョン・チェンシャオ)、黄英(コウ・エイ)、譚通貴(タン・トングイ)

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

この技術の最新動向をお届けします。

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