プロeスポーツプレイヤーの勝敗を左右するオムロンのマウススイッチ技術

〜高品質・高耐久スイッチで心地よい「クリック感」を実現〜

ここ数年、高齢者の健康増進、企業のレクリエーションなど幅広い用途にまで広がりを見せ、急成長を遂げている「eスポーツ」。競技人口はいまや世界で1億人を超え、インターネット配信で見て楽しむ観覧人口も4億5000万人以上にまで拡大しています。eスポーツ勝敗のカギを握るのが"ゲーミングマウス"。ユーザーがゲーミングマウスにこだわる操作感触を実現するスイッチを祖業でもある産業用マイクロスイッチの技術を応用し、約40年前*¹から提供しているオムロン。市場シェア50%*²を誇るオムロン製マイクロスイッチは、絶妙なクリック操作感、数千万回のクリックに耐える耐久性は、メーカー、ユーザーから高い評価を受けています。

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*¹ 1980年後半~マウス向けマイクロスイッチとして販売開始、2010年~ゲーミングマウス向けに特化して販売開始
*² 50%以上のシェア:自社調べ 

 

ゲーミングマウスで定評あるオムロン製マイクロスイッチ

賞金と大会規模も年々拡大しているeスポーツ。市場規模では、2021年に10億ドル突破と、一攫千金も夢ではないスポーツにもなっています。シューティングゲームの「FPS(ファースト・パーソン・シューティング)」、変化する状況で行う戦略ゲームの「RTS(リアルタイム・ストラテジー)」、複数プレイヤーで敵陣地を落とす「MOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・エリア)」などの様々な種類があります。eスポーツは瞬間的な反射神経、的確な情報を抽出する認知能力、状況判断能力、コミュニケーション能力、そしてポイントとなるのが目と手を協応させる優れた操作能力、すなわちコントローラーさばきが必要とされます。0.1秒以下の反応遅れが勝敗に直結するため、ユーザーの素早いマウスさばきに正確に対応できるよう、ゲーム用マウス「ゲーミングマウス」は、一般的なマウスよりも高精度かつ、より反応速度が早く動けるよう設計されています。このゲーミングマウスで重要となる部品の一つがマウススイッチです。オムロンは、産業用機器向けのマイクロスイッチ事業で培った技術をマウス向けスイッチにカスタマイズ。本商品をいち早く提供してきたことでいまや業界スタンダードの商品となっています。

 

重すぎず、軽すぎない適切なクリック感とは

2D対戦格闘ゲーム「Brawlhalla(ブロウルハラ)」、ファーストパーソン・シューティング「Apex Legends(エーペックス レジェンズ )」*³などのプレイヤーであるドランさん(国内最大級のeスポーツチーム Revo所属)は、オムロン製マイクロスイッチ「形式D2FC」を搭載したゲーム向け光学式マウスのロジテック製「ロジクール G ProX Superlight」を愛用しています。

314_2.jpgマイクロスイッチ「形式D2FC」が搭載されている「ロジクール G ProX Superlight」の分解図

ドランさんのプレイ時間は、平均で1日あたり8時間程度。なかでも圧倒的に一番行うのがクリック動作。何度も行うだけでなく、長押しすることもあります。そのような負荷に耐えられることにくわえて、操作感触も重要なポイントとなります。
「日本で1番人気となっている「Apex Legends」では、マウス、キーボードが深く関わります。特に、エリア内のアイテムを拾う動作や、相手を倒すためにターゲットを撃ち続ける動作では、マウスの反応速度、自分の操作スピードにキャラクターの動きをフィットさせた動きができるかはとても重要になる。」とドランさんは言います。

「正直、オムロン製スイッチの良さを最初は意識していなかったです。ただ使っていくなかで、違いがわかりました。G ProX Superlightはすごく軽量の無線マウスですが、ちょうどいいクリック感があるんです。他のマウスだとクリック感が重すぎて、長時間使っているあいだに疲れてしまったり、自分の思ったタイミングで押せなかったりしますが、このオムロンさんのスイッチは、ずっと使っていても疲れないです。あと、ちょうど思ったタイミングで押せます。」

*³ バトルロイヤル形式で3人1組のチームを組み、互いに銃で撃ち合い最後に残ったチームが勝つゲーム。
https://www.ea.com/ja-jp/games/apex-legends

 

"思ったタイミングで押せる"とは?
「たとえば、自分と相手が互いに『あと一発ずつで勝負が決まる』となったとき、自分のタイミングで撃てるかどうかは、めちゃくちゃ重要です。単に早いだけではなく、意図したタイミングで押せるかどうかが重要で、その点でいうと軽すぎてしまうのも間違って押しちゃうことにつながるので大事なポイントとなります。たとえばキャラクターを振り向かせたいときってめちゃくちゃマウスを動かすんですよ。バッとマウスをマウスパッドの端まで動かしたあとに、真ん中に戻す、そのときに指が間違ってクリックしまうんですよね、軽すぎると。でもこのスイッチは軽すぎないので、そういったのにもたえるので間違って押してしまうことがない、そこも良いところだと思います。軽すぎない、重すぎないクリック感ですね。」(ドランさん)

絶妙なクリック感にくわえて、"マウス選びで重視しているポイント"は?
「軽さとストレスのなさ、つまり"軽快さ"ですね。マウスごとでめちゃくちゃ違います。10年くらい前のマウスって100g前後が主流だったのですが、いまは軽量化、無線の波が来ていますね。僕も筋力がそれほどあるわけではないので、重いマウスを長時間使うと疲れちゃうんですよね。このG ProX Superlightだと60gで無線、充電も70時間と長持ちです。とにかく"ストレスフリー"なマウスが良いです。」

"オムロンマウススイッチを使ったから、実現できた目標とか夢はありますか?"
「Apex Legendsでダイヤという上位1%のランクに到達することができたことですね。デバイスの差で負けることは上位に行けばいくほどあると思っています。僕自身は、勝つためにルーティン化している腕まくりと合わせて、このデバイスを使っていないと勝てない領域になりつつあります。急にデバイスが変わっちゃうと100%のパフォーマンスは出せないと思います。プロフェッショナルになればなるほど、新しさよりも使いやすさ、フィット感にこだわって商品を選んでいうようにも感じますね。

"フィット感"とは?
「自分が動いてほしいと思うように操作できてほしいんですよね。ただ、どのデバイスでも完璧はないと思っているんです。どういうマウスを選んでも、その人のために作られたものではないのでフィット感が完全に合うものはない。なので、いろいろと試していく必要があると思っています。お気に入りのマウスを固定してしまうわけではなく、さらにフィット感が合うマウスを追い求めるのをやめないことが大事だと思っています。」
「あと、僕は最初の新品の状態よりも使っていくことで馴染んでくる感じが好きですね。経年劣化するからこそ、自分にとって使いやすい状態に来る時がある。そのときに出せるパフォーマンスがあると思っています。」

 

マウススイッチに最適な金属部品の素材や形状を模索する

ゲーミングマウスは通常のマウスに比べてクリック頻度が格段に高いので、非常に高い耐久性が求められます。また何よりもユーザーの意図を的確に反映する必要があります。そのために避けなければならない問題の一つが"チャタリング"です。チャタリングとは、スイッチをオンした際の不安定な状態のことで、一度押しただけのスイッチがオンオフを何度も繰り返してしまう現象です。マウスの場合は、一度クリックしただけなのに、ダブルクリックのような現象を起こしてしまうことを指します。ゲーミングマウスとしては絶対に避けなければなりません。

マウスは様々な環境で用いられるデバイスです。オムロンのマウススイッチは耐環境性を考慮することでチャタリングを防いでいるとオムロン電子部品事業部 商品開発統括部の尾﨑一文は語ります。
「金属の種類によってはガスが発生しやすい環境だと、接点の表面が荒れたり、変色してしまうことでチャタリングが発生しやすくなります。なかにはタバコを吸う人もいますよね。その辺にも配慮して接点形状や最適な材料を模索し、より最適なものを選んでいます」。

ドランさん「すごい。。。」

オムロンのマウススイッチは以前から最高水準の耐久性を誇っており、現在では6000万回を超える商品も提供しています。さらなる高みを目指して、現在では長寿命・高信頼性・好感触製品の開発も進めています。

「数か月間かけて、自社や競合のスイッチの耐久性試験を行って、どういうところが変化していくのかを分析しています。それをふまえて、どういう形状が良いのかCAE解析(コンピュータ・シミュレーションを活用した解析)などを用いて設計に活かしています。」

生産工程においては、内部に組み込むバネの品質がばらつかないような工程管理や、安定した操作感触を実現するための組み立て方法を取り入れています。同じ操作感触を維持できるよう生産工場では、専用の評価試験治具を用いて人の操作よりも早い頻度で何千万回にものぼる耐久試験が行われています。さらに、部品点数も可能なかぎり減らして不良品を出さないよう取り組んでいます。

「ユーザーのニーズに合わせた製品をタイムリーに提供できるよう、事前に実験や動作解析を行っています。操作感触は、操作荷重とクリック感を定量化して独自の管理工程で作りこみを行っています。」(尾﨑)

314_3.jpgオムロン電子部品事業部 商品開発統括部の尾﨑一文

 

操作感触の要となる"バネ"

一番のこだわりはバネの設計です。「操作感触を決めるバネの形状は、すべてオムロンで開発・設計しています。感触の設計を一番重要視して、スイッチの内部の接点がカチッと切り替わるようにしています。スイッチにかける荷重が一番重たいところからの、落ち込みですね。そこがスパッと落ちないとキレがなく、鈍い動きに感じてしまうんです。ですので、カチッと接点が切り替わる音が出せるように設計しています。バネの材料も仕様を厳しくしたものを採用しています。」(尾﨑)。板バネの動きについてはCAE解析も行い、すべて数値化させることで、操作感触を決める、適切な荷重とクリック感を探っています。現在は、標準的な操作荷重が分かってきているので、それをターゲットにばらつかないように設計し、全数検査して生産しています。
オムロンでは、ユーザーの主観的な感覚であるクリック感の定量化を行っています。最近では、人間工学などの要素も取り入れて、人が心地よいと感じる感触の再現にも取り組んでいます。

314_4.jpg【操作感触の見える化し、マイクロスイッチ内部のバネ形状を検査・評価している】

 

「感触」はリアルとバーチャルをつなぐ橋渡しになる技術

「市場で評価してもらっている、クリックの感触をより長く、より安定に、より正確に、より多くの方に楽しんでもらう商品を揃えていきたいと考えています。感触の問題はかなり主観的なところがあって、複雑であいまいな指標です。この捉えどころのない指標をこれまでの経験と技術で、定量化して制御する技術を使うことで、新しい感触をつかんでいくことにチャレンジしていきたいです。」と、今後の方向性についてオムロン電子部品事業部 アプリ商品事業部の石田慶久は熱く語りました。

「eスポーツはコンピューターを使うことでデジタル化したゲーム競技です。プレイヤーの動きは電子デバイスを介してコンピューター上で表現されます。マウスはそのための入出力インターフェースの一つです。大きく捉えると感触技術は『リアルの世界』と『バーチャルな世界』を繋ぐ橋渡しになる商品だと思っています。」

「オンライン上に構築される3D空間であるメタバースが注目されているように、バーチャルな世界はどんどん大きくなると考えられます。そこではリアルとバーチャルをつなぐ『感触』が、より求められるようになると考えていますし、そのために入出力デバイスもマウス以外にも広がってくると想定しています。感触技術という価値を新たなインターフェースにどんどん提供して、顧客価値の創造につなげていきたいと考えています」。

314_5.jpgオムロン電子部品事業部 アプリ商品事業部の石田慶久

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

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