血圧計のグローバル累計販売台数が3億台を突破 ~脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)の実現に向かって挑戦~

家で血圧を測る姿は日常生活で見慣れたワンシーンになっていますが、オムロンが家庭用血圧計を発売した1973年当時、家庭で血圧を測る習慣はまだありませんでした。それから約50年後の2021年現在では、家庭用血圧計は世界中に普及しています。なかでも、オムロンの家庭用血圧計は、世界110以上の国と地域で使われ、今年、グローバル累計販売台数が3億台を突破、グローバルシェアNo.1を維持し続けています。今回は、販売台数3億台までの歩みと今後の取り組みについて紹介します。

家庭での血圧測定の普及・啓発に尽力

オムロンが初めて家庭向けの血圧計を発売した1973年当時は、血圧は病院で医師が測ることが当たり前の時代。血圧を測るためには専門的な知識やスキルを要するため、家庭で生活者が自分で血圧を測定する事は難しいと考えられていました。それでも、オムロンは、家庭で測った血圧が人々の健康に役立つと考え、誰でも家庭で簡単に測れる使いやすさと、医療でも通用する確かな測定精度にこだわり商品開発を続けてきました。また、家庭での血圧測定の普及に向け、医療現場や専門家と連携し、多くの臨床研究への参画や啓発活動を行い、日本のみならず世界にその重要性を伝えてきました。

309_1.pngオムロン初の電子血圧計「マノメータ式手動血圧計(HEP-1)」

1986年、現在の家庭血圧の基準値である「135/85mmHg」を導き出すもととなった、世界初の大規模臨床研究「大迫研究(おおはさまけんきゅう)」が開始されます。本研究は、高血圧や脳卒中の多発地域だった岩手県花巻市大迫町一帯(当時)の状況を把握・改善するために、日常生活の中で血圧測定を行いながら血圧と病気との関連性を調査するものです。オムロンは300台の家庭用血圧計の提供に協力し、家庭血圧を指標とした研究がスタート。医療関係者とともに家庭での血圧測定の普及・啓発に努めました。

大迫研究では、家庭で測定した血圧値の方が診察室で測った血圧値よりも脳卒中の発症リスクとの関連が高いという事実が発見され、この研究結果が、「135/85mmHg」の基準値につながり、国際的なガイドラインにも影響を与えました。そして、大迫研究の開始から28年後の2014年、これらの取り組みが実を結び「高血圧治療ガイドライン2014」において「高血圧治療に関して、診察室血圧より家庭血圧を優先する」ことが規定され、高血圧治療における家庭での血圧測定の有用性が認められました。その後、日本だけでなくグローバルに家庭血圧が高血圧治療のスタンダードとなったのです。

約50年で血圧計の世界累計販売台数が3億台を突破

血圧計の発売開始から、2009年に累計販売台数1億台を突破するまでには、36年もの期間を要しました。その後、人々の健康意識の高まりや、世界的な生活習慣病患者の増加、家庭血圧の高血圧治療ガイドライン化によって、家庭での血圧測定が浸透し、1億台達成から7年後の2016年には2億台を達成しました。その後も、血圧計市場はグローバルで拡大を続け、欧州や米国、中国だけでなく、インドやブラジルなどの新興国でも需要が高まり、わずか5年後の2021年、3億台を突破しました。

さらに、コロナ禍によって人々の健康意識が高まり、2020年度の血圧計の販売台数はグローバルで前年比約120%の2,400万台へと伸長。家庭血圧の有用性が認められたことから、家庭で血圧を測定することの習慣はグローバルに浸透し続けています。

脳・心血管疾患の発症ゼロを目指して

今や、高血圧患者は世界に約10億人、日本には約4,300万人いるといわれています。高血圧の恐ろしさは、症状がないまま進行し、脳卒中や心不全などリスクの高い脳・心血管疾患を引き起こす原因となることです。日本国内においても、2017年の死因第2位は、心不全などの心疾患、第3位は脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患であり、これら、脳・心血管疾患による死亡者の増加は無視できない健康課題となっています。

オムロン ヘルスケアは、「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」をミッションに、 脳卒中や心不全などの脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)の実現に向かって様々な挑戦を続けています。現在は血圧計の開発などに加え、新しい医療インフラとして期待される遠隔診療サービスのグローバル展開、AIを活用した脳・心血管疾患の発症を未然に防ぐアルゴリズムの開発などに挑戦しているのです。

309_2.png2019年に発売された腕時計型のウェアラブル血圧計 HeartGuide

例えば、これまでの高血圧・心疾患治療では、診察時のデータを用いて医師が治療方針を決めてきました。しかし、血圧は常に変動するため、診察時の一時的な情報だけで血圧値の傾向を詳しく把握し、投薬の効果を確認することは難しいといわれてきました。そこで、オムロン ヘルスケアでは、家庭で測定した血圧データを医師と患者が共有し、医師が血圧値の変化をモニタリングすることで異常の早期発見・治療に活用できる、遠隔診療サービス事業に取り組んでいます。

2020年9月、北米で遠隔患者モニタリングサービス「バイタルサイト(VitalSight)」をスタート。さらに2021年4月には英国で高血圧患者向け遠隔診療サービス「ハイパーテンション プラス(Hypertension Plus)」の提供を開始するなど、グローバルに新たな社会的課題を解決するためのサービスを提供しています。シンガポールやインド、ブラジルでもパートナー企業と連携した遠隔診療サービスを進めており、各国で異なる医療保険制度や医療現場のニーズを捉えたサービスの展開を進めています。世界規模での新型コロナウイルス感染症拡大により顕在化した対面診療における課題、人々の価値観・生活様式の変化により、今後、遠隔診療サービス普及への期待はいっそう高まると考えられています。

また、日本国内では、京都大学と「健康医療AI」の共同研究講座を2021年6月からスタート。AIを活用して、家庭で測定した日中や夜間の血圧や体重、活動量など複数のデータを解析し、脳・心血管疾患の発症の予兆を検知するアルゴリズムの開発に取り組んでいます。さらに、個人の生活習慣や特性に合わせた血圧改善方法の研究も進めています。オムロンの生体データ計測技術と京都大学のAI技術を組み合わせることで、脳・心血管疾患の早期予兆検知と個人に合わせた血圧改善を実現し「ゼロイベント」実現を目指します。

血圧計グローバル累計販売台数3億台はゴールではなく、通過点に過ぎません。オムロン ヘルスケアは、今後も血圧測定にとどまらず、医療機関と連携し、疾病を未然に防ぎ重症化させないための取り組みを加速させ、脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)の実現に向けて歩み続けます。

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