社会的課題の解決へ、社員の背中を押し情熱を解放する 第9回「TOGA(The OMRON Global Awards)」 グローバル大会開催

オムロンは、創業者の立石一真が制定した「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲の精神を受け継ぎ、事業を通じて社会的課題を解決することで、よりよい社会をつくるという企業理念の実践に取り組んでいます。そして、企業理念実践を推進する活動として、「TOGA (The Omron Global Awards)」という取り組みを2012年より行っています。TOGAとは、オムロン社員による企業理念実践の物語をグローバル全社で共有し、皆で讃え合い、共感と共鳴の輪を拡大する年間を通じた取り組みです。毎年、グループの各組織・各地域の予選を勝ち抜いた企業理念実践の物語が社員一人ひとりの想いと共に語られてきました。

 

はじまりは、ひとりの社員の行動だった

代表取締役社長 CEOの山田 義仁が、TOGAの実行に思い至ったのは、ひとりの社員の熱い想いと行動がきっかけでした。
インドネシアの生産子会社で働くイラワン・サントソは2007年に工場長に就任した後、社会福祉法人・太陽の家との合弁事業で多くの障がい者が働くオムロン太陽(大分県別府市)を訪問しました。そこでサントソは、障がい者が自ら、一人ひとりの能力に合わせてオリジナルの治具を開発したり、互いの能力を補い合ったりしながら、健常者と共に活きいきと働いている姿を目の当たりにします。感銘を受けたサントソは、インドネシアにも同じように障がい者が働ける工場をつくりたいと考え、ついに自らの工場で実現。さらに、自社工場で実践したノウハウを広く公開し、インドネシア政府をも巻き込み障がい者雇用の促進に貢献しました。

サントソのこうした活動は社内外で高く評価され、2012年の創業記念式典において、企業理念の実践にチャレンジした事例として「特別チャレンジ賞」を受賞します。山田はこの時、「オムロンには、彼のように企業理念を実践した事例が他にもたくさんあるはずだ。現在、そして未来に向けて皆が取り組んでいる企業理念実践の物語を掘り起こしたい。そして、そうした取り組みを社員皆で共有し、応援し、称賛したい。」と考え、TOGAをスタートさせたのです。以来、企業理念実践に対する共感と共鳴の輪は、社内はもとより社外にまで広がり、今やオムロンの成長の大きな原動力となっています。

 

コロナ禍で「いま自分たちにできることは何か」を考え、様々なチャレンジを実践

今年9月15日に開催された「第9回 TOGAグローバル大会」では、2020年度エントリーされてグローバル6,461テーマの中から選ばれた16テーマが、オンサイトとオンラインのハイブリッド形式で社内外に共有されました。コロナ禍という未曽有の危機下にあった昨年も、オムロンでは世界各地で多くのチャレンジがなされ、企業理念の実践に向け逆境を乗り越えて立ち向かった物語がたくさん生まれました。
世界中がコロナ感染拡大に苦しむ中、社員たちは「いま自分たちにできることは何か」を考え、自ら課題を見つけ、お客様をはじめ様々な方々と行動を起こし、様々な壁を乗り越えました。

スペインでは、人工呼吸器が足りないために十分な治療を受けられないまま亡くなる人が増え続けていました。そうした中、オムロン スペインの制御機器事業のエンジニア、ラウル・ニコラスは、「一人でも多くの命を救いたい」との思いから、自ら人工呼吸器の開発プロジェクトに参画します。プロジェクトで最初に開発された試作機を見たラウルは、オムロンのファクトリーオートメーション(FA)技術を応用すれば、患者の呼吸量や圧力をリアルタイムに測定し、学習しながら適切な量の酸素を供給することができる、もっと高性能な人工呼吸器が作られるのではないかと考えました。しかし、ラウルはFA機器の開発にしか携わってこなかった自分に、医療機器を作れるのだろうか?という不安も抱えていました。そこで、ラウルが抱えていた悩みを3人の同僚たちに伝えると、皆が是非やろうと賛同し、協力を申し出てくれたのでした。ここからラウルをはじめ4人のメンバーの挑戦が始まったのです。
プロジェクトには医学や機械だけでなく、法律、コンピュータ、データ解析、といった様々な分野の専門家たちが参画しました。その中で4人は、人工呼吸器の開発・製作にあたっていた大学関係者に対し、FA機器を用いた設計や開発の指導、プログラミング支援、機器の提供を行いました。人工呼吸器はわずか2週間という短期間で完成し、各種試験を終えた後、新型コロナウィルス感染症の為に開発された人工呼吸器として初めて、スペイン政府の承認を得ることになりました。そして、スペインのみならず、エクアドルやブラジルなど南米各国で導入され、現在では、世界中のエッセンシャルニーズに貢献しています。医療機器の開発に携わったことのないメンバーの挑戦を支えたのは、『企業は社会に貢献してこそ存在する意義がある』とするオムロンの企業理念でした。

308_2.jpg人工呼吸器の開発の携わったラウル・ニコラスと3名のメンバー

中国では、マスク不足を解消するために、電気自動車メーカー BYD(比亜迪)社が20年1月に自社でのマスク製造を決意。3日間で設計図を作成し7日間で設備を完成させます。その後、10日間で設備稼働という信じ難いスピードでマスクの生産ラインが立ち上がり、1か月後には日産500万枚の生産を実現します。短納期と責任の重さから競合他社が次々に撤退する中、オムロンはBYD社にとって初めてとなるマスクの生産に、チーム一丸となって取り組み、現場への訪問もままならない時期に、最終的には1800本のマスク生産ライン、200台の不織布設備に必要な機器のタイムリーな納品と様々な技術サポートを行いました。そしてBYD社は日産1億枚の生産が可能な世界最大級のマスクメーカーとなったのです。この桁違いの取り組みにおいて、オムロン社員を支えたのは、ただ「コロナウィルス感染症の拡散防止をサポートすることで、社会に貢献したい。」という思いだったのです。

ドイツとポーランドでは、自律的に移動しながら除菌や消毒を行う消毒用ロボットが開発されました。FAの技術で感染拡大の抑制に貢献できないかと考えた社員らは、多くの人手が割かれている医療機関や学校など公共スペースの除菌に着目しました。自律走行可能なオムロンのモバイルロボットに、消毒に効果のある紫外線光を照射可能な機器を搭載、場所やルート、時間をあらかじめ設定すれば、指定された時間になると、人に代わって消毒・除菌を行う消毒用ロボットを完成させました。これにより、人体に影響のある紫外線光を作業者など人が浴びることなく照射する消毒作業の自動化を実現します。また、作業時の二次感染も防げるため、作業員の安全確保、負荷軽減といった課題を解決し、感染症拡大の防止に貢献したのです。


様々な場所で活躍する消毒用ロボット(Control Tec社)

日本では、供給不足で店舗からなくなった体温計を、必要な人に少しでも早くお届けするために、25年ぶりに国内での生産が再開されました。通常10カ月かかる生産ラインを半分の5か月で立ち上げ、急拡大した国内の体温計需要にお応えしました。

新型コロナウィルス感染症が急拡大する中、オムロンでは世界中でこのようなプロジェクトが一斉に立ち上がりました。なかには、誰もが不可能ではないかと感じたプロジェクトも多くありました。時間がない、ノウハウがない、人がいない、など次から次へと高い壁が立ちはだかります。その時、社員を支えたのは、「誰かを助けたい、人を救いたい」という思いだったのです。

 

これからも続く企業理念実践のチャレンジ

山田は、今年のTOGAグローバル大会について、その思いを次のように語っています。
「私たちは皆、世の中を良くしたい、社会の発展に貢献したい。そういった志を胸に抱いています。誰もが、日々の仕事の中で、様々な問題に対して、『私はこうしたい』、『こうすればよいのに』というアイデアや思いを感じているはずです。しかし、日々の仕事の枠を越え、それらの新しいアイデアや想いを形にし、行動に移すためには、初めの一歩を踏み出す勇気がいります。その一歩を踏み出すために私たちの背中を押し、殻を破る勇気を与え、情熱を解放する。それが、それこそが、オムロンの企業理念です。そして、そのチャレンジと勇気を皆で共有し、共鳴の輪を広げる、その取り組みがTOGAなのです」

308_4.jpg山田による第9回TOGA グローバル大会の開会宣言

インドネシアの生産子会社で行われた企業理念の実践への共感と共鳴から始まったTOGA。今年も多くのチャレンジの背中を押し、社員の情熱を解放しました。オムロンはこれからも、企業理念の実践を通して社会的課題の解決にチャレンジし続けます。

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