自治体と進める「災害に強いレジリエントな地域づくり」

~舞鶴市で水害のリスクをリアルタイムに把握するモニタリングシステムを運用開始~

寒の雨、梅雨、秋雨など、雨は、季節の移り変わりを告げる便りでもあります。しかしそれ以上に近年は、台風、集中豪雨、線状降水帯による長雨が増え、各地で水害が増加しています。それに対し、皆さんはどのような備えをしているでしょうか。近年、日本では雨による川の氾濫や浸水などの自然災害が頻発化・甚大化しており、各自治体も自然災害対策に力を注いでいます。今回は、オムロンが進めている「災害に強いレジリエントな地域づくり」の中でも特に力を入れている水害への取り組みを紹介します。

 

大雨、台風時、避難するか否かをどうやって判断するか?

「また明日も雨か・・・。」京都府舞鶴市に住むKさんは、そう言って心配そうに空を見上げました。毎日、会社まで車で通勤しているKさん。「長雨や台風の時はどうしても川の増水が気になってね。今自分がいる場所はもちろん、自宅や通勤経路への影響も必ず確認しているんだ。避難するにも準備が必要だからね。」と語ります。

とはいえ川の増水状況を自分で確かめに行くわけにはいきません。大雨が続いたり、台風が到来した時、いつ、どのような状況になったら避難するか、皆さんならどうやって判断しますか? 多くの方が、地域単位で出される報道から自分に関係のある場所の危険度を推測し、避難するか否かを決めるのではないでしょうか。

国土交通省が2020年に発表した「水害・土砂災害に関する防災用語改善検討会」の報告によると、防災情報などに関するアンケート調査で、「放送でどのように言われたときに避難しようと思うか」という問いに対し、「身近な地名かつ詳細の情報」を言われた時が67%とトップに挙がりました。続いて「直ちに、避難してください」「全員、避難してください」と言われた時が上位を占め、「危険を自分事としてとらえた際に、避難行動を起こす」と分析されています。

 

舞鶴市とオムロンが連携し、水位のモニタリングシステムを開発

舞鶴市は、約8万人の人口を抱える京都府北部の中心都市です。近年、台風や集中豪雨による浸水被害が頻発しており、2013年、2017年、2018年の3度にわたって、災害救助法の適用を受けました。この間、浸水被害を受けた家屋は、延べ2,800戸です。

舞鶴市はさまざまな災害対策を講じていますが、これまでの対策のみでは被害を抑えることが難しくなっており、住民が自律的に判断・行動を起こして被害を最小化する仕組みづくりが必要になってきました。その中で抱える課題の一つが、「豪雨時において、避難判断を行うための情報が不足している」こと。以前は市職員が急激に水位の上昇した河川に赴いて災害状況を確認していたため、危険な思いをされたこともありました。

そこで同市は現在、災害対策の強化を目指し、産官学連携で自然災害に強いレジリエントな地域づくりに取り組んでいます。オムロン ソーシアルソリューションズ(OSS)は、舞鶴市と共にそれを進めるパートナー企業の1社です。OSSは、その第一歩として地域全体の水害のリスクを、リアルタイムかつ緻密に把握することができるモニタリングシステムを開発しました。

このシステムでは、国・府・市と管轄が異なる河川すべての水位情報を統合。その他にも水位を把握する必要がある地点にセンサーを追加し、地域全体の河川の水位情報をリアルタイムにモニタリングします。さらに把握した情報をモニター上の地図に表示。住民や地域職員はすべての水位関連情報をパソコンやスマートフォンなどの画面で確認できます。
地図上には、潮位や河川水位などの情報をアイコンで表示。アイコンを「紫(氾濫危険)」「赤(避難判断)」「黄(氾濫注意)」「緑(水防団待機)」「青(安全)」の5段階に色分けすることで、危険度を視覚的かつ直感的に認識できるのが特長です。現在WEB上に公開し、パソコンやスマートフォンがあれば、誰でもこのモニタリングシステムを利用することができます。舞鶴市ではこのシステムを「舞鶴市総合モニタリング情報配信システム」と名付け活用が進んでいます。これにより、住民は災害発生時に迅速かつ安全な避難行動を自律的に行うことができるようになったのです。

舞鶴市の多々見 良三市長は、取り組みを始めた理由について、こう話します。「我々の町は市街地を挟む海と山の距離が近く、降雨から短時間で水位が上昇することに加え、高潮による海面上昇の影響を受けるので、雨にとても弱いという特徴があります。オムロンさんが持つ技術で様々な気象情報を得て、いち早く避難情報を出したいと。我々の街で、水害の対応ができたら、日本全国どこでも応用が効くと思ったのです。」

307_2.jpg舞鶴市総合モニタリング情報配信システム (実画面

 

自然災害に強い地域づくりへ、オムロンの挑戦は続く

近年、自然災害は頻発化・甚大化の傾向がみられ、今後ますます各地域で「自然災害に強いまちづくり」が求められていくでしょう。そうした社会的課題を前に、モニタリングシステムの開発を担当するOSSの中野はこう言います。
「日本の自然災害は、頻度も規模も大きく変わってきました。何より特徴的なのは、災害発生までの時間が短くなったことです。2018年に西日本を中心に全国の広い範囲で発生した『平成30年7月豪雨』では、氾濫注意の発令から河川の氾濫が起こるまでわずか2時間未満という短時間に洪水が発生した事例もありました。そんな状況でも一人ひとりがタイムリー、かつ簡単に情報にたどり着ける仕組みがあれば、命を守る行動が取れると信じています。」

307_3.jpgオムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
モニタリング事業統括部 中野 公太

モニタリングシステムの今後について、中野は決意を語ります。
「洪水対策から始めたサービスですが、引き続き研鑽を続け、"市民に最も近い行政である市町村と住民の皆様が利用するサービス"を実現していきます。また、その仕組みを日本の都市全体に広げていきたいと考えています。」

「舞鶴市総合モニタリング情報配信システム」が稼働し、いつでも、どこでも、スマートフォン一つで、川の状況をチェックできるようになり、前述のKさんは、雨の日でも少し安心して過ごせるようになったそうです。「離れた目的地の状況を確認してから行動できるようになって、ありがたい」とKさんは積極的に活用しています。

自然災害に強いレジリエントな地域づくりに向け、オムロンの挑戦はまだ始まったばかりです。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

この技術の最新動向をお届けします。

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