AIやロボットが進化した近未来、人はより「人らしく」生きられる[後編]

「AI」と「ロボット」はこの先の新しい社会を構築する上で、重要となる分野です。しかし言葉だけがひとり歩きして、実際に「AI」が何をしてくれるのか、「ロボット」がどのように生活に関わっていくのか、しっかりと理解できてない人も多いはず。そこでAI技術のキーパーソンに「AI」や「ロボット」についてインタビューを通して理解していきます。

3回目の後半は、引き続きオムロン サイニックエックス*¹でAIやロボットの研究開発をしている牛久祥孝さんフェリクス・フォン・ドリガルスキーさん、西村真衣さんと、モデレーターにアントレプレナー / フューチャリストの小川和也さんによるグループインタビュー。2033年に到達する「自然社会」、さらにその先の未来でAIやロボットがどのように人と関わっていくか。3人ならではの具体的なビジョンをお聞きします。

*¹ オムロンの考える"近未来デザイン"を創出する戦略拠点。
https://www.omron.com/sinicx/

シリーズ一覧
第1回:すでに私たちのそばにあるAI[前編][後編
第2回:私たちを助けてくれるこれからのAIとロボット
第3回:AIやロボットが進化した近未来、人はより「人らしく」生きられる[前編][後編]

 

近未来実現に向けた研究アプローチ

小川和也(以下、小川):前回ロボットとAIを組み合わせることで、ロボットが人の社会に自然な形でなじんでいくというお話でした。そのために現在はさまざまな研究が進められていると思いますが、いかがでしょうか?

フェリクス・フォン・ドリガルスキー(以下、フェリクス):現在のAIやロボットのブームのおかげで、研究領域として注目はされて進んではいるのですが、実社会で安全に使えて、タスクを完全に任せられるロボットになるまではまだ遠いかなと感じますね。牛久さんの研究している画像認識分野ではどうですか?

牛久祥孝(以下、牛久):画像認識の分野も同じように加速してすごく進んだ領域なので、今後もそれに応じてそのまま延長線上で進むと期待しています。

305_2.jpgオムロンサイニックエックス 牛久 祥孝

小川:西村さんの研究分野はどうですか?

西村真衣(以下、西村):ロボットナビゲーションにおいても、解けていない現場の課題はまだまだたくさんあります。
例えば、ロボットは予測していない変化に遭遇すると止まってしまいますし、絶対に事故を起こさないよう安全に動くことを求められています。これらを実現するための課題を研究に落とし込み、現場で使える技術として還元する方法を日々模索しています。

 

AIやロボットが活用される中での人の役割

小川:AIやロボットといった技術が将来どのように社会と関わっていくのか、また社会を変革していくのかをお聞きしたいのですが、今後AIによって人の在り方はどのようになると思いますか?

西村:20〜30年後くらいには、機械が日々の暮らしのなかで人が抱えている障がいやバリアをなくしたり、アシストをしてくれたりする存在になっているのかなと。人間とロボットが一緒に重いモノを持ち上げるといった共同作業をするときのサポートなど。ロボットが相手の様子を見て、力の入れ具合を自然に調整してくれたりするイメージです。

小川:では、50年後の世界はどうなっていると思いますか?

フェリクス:家庭で自由に動き回れるロボットがいて、人が苦手なことをやってくれる、それによって人はもっと自由になっていると思います。それがいつなのか答えるのはちょっと難しいですが。

牛久:今よりもっと、ロボットとコミュニケーションがとれて、人の能力を拡張させるものが存在するようになると思います。人間の知的生産活動のアシスタント的なのもあるのかなと。 人間が最適化してほしいものがどんどん抽象的になる中で、機械やシステムが自分で具体的な最適化目標を設定できる。そうなれば、自律的により賢く振る舞えるようになると考えています。

小川:ロボットやAIがなんでもやってくれる世の中になると、人間の役割はどうなっているのでしょうか?

牛久:そういう社会になったときに、人間は何をすべきかと言えば、アイデアやひらめきを生み出す、また感動を生むことが価値になると思います。何に感動をするかは、人が決めるものであり、時代によって変わっていく。その中で、人間は感動を生み続ける存在であり、人間の活力として今後も残っていく部分だと思います。

西村:まさにそうですね。私は50年後には、機械が人間のパートナーとなる、機械と人が協調していくための新たなインターフェースが生まれていると思います。機械と人が意思疎通を取るために、音声、ジェスチャー以外に、もっと手段が増えていくのではと。機械が日常生活に溶け込み、我々のことをより理解して苦手な作業を代替してくれるようになれば、人間は仕事や趣味に対してより高度な付加価値や、やりがいを見出すようになるのかもしれません。

牛久:あとは、機械、あるいは計算機が自分自身で何か目標を見つけられるようになるだろうと思っています。今は人間が出す指示にそって、ロボットが自動で何かを混ぜたり、計測したりといった作業を担当しています。それを人間の指示無しで、ロボットの頭の中にある人工知能がやって、その結果をまとめ上げて、研究者の気づきを誘発するような形で見える化をする。

いま材料科学の世界では、そういった、何か特定の性能を最大にする材料をうまく見つけ出すという、ひとつの機能で働くAIやロボットの研究をやっています。これからは、AIやロボット自身が何を最適化するべきかというのを、あまり具体的ではない指示だけでもやれるようになってほしい。そのなかで、人間はひらめき、気づきを生み出していく、そんな未来が来るのかなと思います。

小川:50年後にはアニメにでてくるようなロボットは誕生するのでしょうか?

フェリクス:まだ、分からないですね。ただどこかでスマートフォンが登場したようなブレイクスルーがあるのではないかと。今よりも、もっとロボットの価格が手ごろになれば、ものすごく普及してくると思いますし、人の苦手なことを任せられる存在として活躍してくれるかなと。そのためにもこれからも研究を続けていきたいと思いますね。

305_3.jpgオムロンサイニックエックス フェリクス・フォン・ドリガルスキー

 

[まとめ]
AIやロボットが発達することで、より人間社会にパートナーとして関わってくる。AIやロボットによって、人はより人らしい生き方ができ、そこに価値が見いだされる。オムロン サイニックエックスでは、そんな未来を実現するための研究が行われているわけです。

 

【プロフィール】
オムロン サイニックスエックス株式会社
プリンシパルインベスティゲーター
牛久祥孝(うしく・よしたか)
2014年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了、NTTコミュニケーション科学基礎研究所入所。2016年に東京大学情報理工学系研究科講師を経て、2018年10月より、オムロン サイニックスエックス株式会社のプリンシパルインベスティゲーターに就任。2019年より、株式会社Ridge-i Chief Research Of-ficer、現在に至る。主として画像キャプション生成など機械学習によるクロスメディア理解の研究に従事。

 

オムロン サイニックエックス株式会社
ロボティクスグループ シニアリサーチャー
フェリクス・フォン・ドリガルスキー
2013年、KIT(ドイツ)とINSA Lyon(フランス)を同時卒業(Dipl.-Ing. と Ingenieur diplômé[機械工学])。2018年、奈良先端科学技術大学院大学のロボティクス研究室を卒業(博士[情報])。AIST, Siemens, ThyssenKrupp などでの職務経験を経て2018年10月より、オムロン サイニックエックス株式会社のシニアリサーチャーに就任、現在に至る。主として、ロボットマニュピレーション、プランニングおよび自動組み立て操作などのロボティクス研究に従事。

 

オムロン サイニックエックス株式会社
リサーチエンジニア
西村真衣(にしむら・まい)
2015年、京都大学大学院情報学研究科修士課程修了、NTTサービスイノベーション総合研究所に入所。2017年より株式会社Fixstarsシニアエンジニアを経て、2019年よりオムロンサイニックエックスにてリサーチエンジニアとして入社。2020年より、京都大学大学院情報学研究科社会人博士課程に在籍し、現在に至る。主として混雑環境下における環境認識及びロボットナビゲーションの研究に従事。

 

グランドデザイン株式会社代表取締役社長CEO、北海道大学客員教授
アントレプレナー / フューチャリスト
小川和也(おがわ・かずや)
慶應義塾大学法学部政治学科(計量政治学専攻)卒業後、アントレプレナーとして独創的なアイデアで新しい市場を切り開く一方、フューチャリストとしてテクノロジーに多角的な考察を重ねて未来のあり方を提言している。『デジタルは人間を奪うのか』(講談社)、『未来のためのあたたかい思考法』(木楽舎)など著書多数。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

この技術の最新動向をお届けします。

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