事業成長と温室効果ガス排出削減は両立するのか? ~ 脱炭素社会の実現に向けたオムロンの挑戦 ~

日本政府が2050年のカーボンニュートラル実現を宣言するなど、地球温暖化防止に向けて、世界各国では温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする脱炭素社会実現に向けた動きが加速しています。企業も自分たちの持続的な事業活動を脅かす、気候変動への対応として、温室効果ガス排出削減を積極的に進めています。今回は、オムロンが進めている事業成長と温室効果ガス削減を両立するための取り組みについて紹介します。

脱炭素社会の実現に向けて、世界は大きく動き出している

みなさんは、全世界で、どれくらいの二酸化炭素が、1年間で排出されているかご存じですか?

それは、約330億トンにもなります。この値はこの50年間近くで2倍以上となり、その間に地球の平均気温は0.86度も上昇、今も増え続けています。そのため、国際機関や各国政府は、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガス排出量の削減を解決すべき課題として掲げるようになりました。

例えば2020年9月の国連総会で中国は、2060年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを表明しました。日本でも、2050年カーボンニュートラル宣言を行い、脱炭素社会実現に向けて、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を電動車(EV)にするなど、14の分野で具体的な目標を設定し、取り組みを加速しています。

また、企業においても地球温暖化に伴う気候変動は、今後の事業活動の継続性を脅かすものとして、二酸化炭素排出量削減の取り組みを進めています。その代表的な取り組みとしては、自社施設への太陽光発電システムやバイオマス発電システムの設置、再生可能エネルギー由来の電力(再エネ電力)の調達などが挙げられます。

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出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2020年版
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より引用


2050
年の温室効果ガス排出ゼロを目指して
オムロンは「徹底した省エネの実行」と「使用電力のクリーン化推進」を実施

オムロンでは、持続可能な社会をつくることは企業理念にある「よりよい社会をつくる」ことそのものであると考え気候変動への対応として、温室効果ガス排出量削減に長年取り組んできました。2018年7月には、2050年に温室効果ガス排出量ゼロを目指す中長期の環境目標、「オムロン カーボンゼロ」を設定しています。

オムロンが事業活動で排出する温室効果ガスは、そのほとんどが電力由来のCO2です。そのため、オムロン カーボンゼロを実現するための活動は、「徹底した省エネの実行」と「使用電力のクリーン化推進」を柱としています。

徹底した省エネの実行は、徹底した診断から

オムロンでは、2018年夏、徹底した省エネを実行するための「省エネポテンシャル診断」を、エネルギー消費が多い日本国内の生産拠点を中心とした13拠点を対象に、エネルギーの運用・設備改善を手掛けるグループ会社、オムロン フィールドエンジニアリング(以下OFE)と共同で実施しました。

この診断により、エネルギー損失リスクやエネルギー効率向上機会の把握、その具体策立案および効果と費用の試算することで、各拠点が省エネできる余地を探りました。結果、すでに各拠点は、通常の省エネ対策を対応済みであり、更なる省エネを行うには拠点ごとに特別な対策を実行していく必要があることが判明しました。そこでOFEは、10年以上前から培ってきたエネルギー合理化のノウハウ*を活用し、拠点ごとに異なるエネルギーの使われ方をさまざまな角度から分析し、最大効果が得られるソリューションを創出。例えば、半導体の製造など、製造過程で熱を多く出す生産拠点では、今まで捨てていた熱を再利用し有効活用するなど、事業環境に合わせた52種類の省エネ実行策を実施しました。

省エネポテンシャル診断を担当したOFE エネルギーマネジメント本部 梶原 大は、「生産現場のエネルギー診断で大事なことは、現場のヒアリングで設備の運用を正しく理解することです。今回の対策により、発生する運用の見直しやそれに伴う生産品質への影響など様々なリスクを排除しながら進めることが非常に難しかった。」と話します。

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省エネポテンシャル診断を担当した
OFE エネルギーマネジメント本部 梶原 大

各拠点に合わせて、電力のクリーン化を推進

オムロンでは使用電力のクリーン化を推進していくために、自社施設への太陽光発電システムの設置および、「COゼロ電力」の調達を進めてきました。

自社施設への太陽光発電システムの設置に向け、各拠点の敷地内を巡り、太陽光パネルを設置できる頑丈な屋根や十分なスペースなどの実現可能性を調査。2020年度までに滋賀県野洲、草津、京都府桂川、三重県松阪、岡山、大分の6つの拠点で、太陽光発電システムを導入しました。

また、COゼロ電力の調達では、水力発電由来の電力の購入を、関西地方の拠点で2018年から、関東地方の拠点で2019年から開始し、関西・関東エリア合わせて10拠点で調達を実施しました。

この取り組みはグローバルでも実施しており、2017年からは、オランダの拠点で風力発電由来の電力の調達を開始しました。また、中国では、自社敷地内に現地電力会社が設置した太陽光発電システムからの電力調達を進めるなど、地域ごとに最適な"投資対効果"を生み出す施策を講じています。

こうした「徹底した省エネの実行」と「使用電力のクリーン化推進」を柱とした活動は、毎年着実に成果を上げ、2020年度は、当初の目標であった2016年度比4%削減を大幅に上回る51%の削減を達成する見込みです。

事業成長と温室効果ガス排出量削減の両立に向けた新たな課題

短期間で目標を達成し、大きな成果を上げた一方で、2050年に向かっての課題はまだ多くあります。

全社の環境取り組みを推進するグローバル人財総務本部の立岡 周二はこう話します。

「現時点では目標の温室効果ガス排出量を大幅に達成していますが、これから先、事業成長に比例して、温室効果ガス排出量は増えていきます。しかし、温室効果ガス排出量は目標に向けて削減していかなくてはなりません。温室効果ガスの排出量削減の目標達成に向けた取り組みを、永続的に推進していくことは、ステークホルダーに対してのオムロンの責務です。事業の成長と温室効果ガス排出量ゼロの両立を目指していきます。」

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グローバル人財総務本部 立岡 周二

2050年に温室効果ガス排出量ゼロ達成に向けた取り組みの推進は、国連が定める「持続可能な開発目標」であるSDGsにも貢献します。オムロンは、これからも「徹底した省エネの実行」と「使用電力のクリーン化推進」を柱にした活動で、事業性を担保した温室効果ガスの排出量削減に取り組み、社会価値と企業価値の向上を目指してまいります。

*OFEのエネルギー合理化ノウハウについて
OFEでは、環境対策を進める多くの企業に様々なエネルギーソリューションを提供し続けているとともに、お客様に最適で効果的なエネルギーソリューションを提供するため、浜松に「ヒューテック環境ラボ」を2014年に開設し、そのノウハウを蓄積してきました。
「ヒューテック環境ラボ」では、太陽光発電、小形風力発電システムに加え、マイクロガスコジェネ、小型バイナリー発電機、ボイラーといった「創エネ」システム、蓄電装置や貯湯槽といった「蓄エネ」システム、これらに系統電力を加え、構内負荷などへの供給を最適にコントロールするなど、どんな組合せや使い方が最も効果的か、検証データを日々蓄積し、その成果をお客様に展開してきました。例えば、太陽光発電システムにおいては、複数メーカーのパネルを併設して発電効率やメンテナンス性など様々な角度から比較検証し、導入先の環境に最適なモノを採用し、発電量を最大化してきました。