デザインは人の心を動かす。オムロン ヘルスケアの「こころが前を向くデザイン」

オムロンの電子体温計「けんおんくん」を知っていますか?2004年に発売された「けんおんくんMC-670」は、それまでの細長い電子体温計の概念を覆し、液晶画⾯が⼤きく、丸みを帯びた形でデザインされています。わきで測定するときの挟みやすさや表示の見やすさなどが評判となり、現在のMC-681まで多くの家庭で使用されています。この大胆なデザイン変更の背景には、「多くの人の健康を支える商品は、もっと使ってくれる人の気持ちに寄り添ったデザインでなくては」というオムロン ヘルスケアの強い思いがありました。ユーザーの気持ちに寄り添ったデザインとは、どのようなものなのでしょうか。

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電子体温計 MC-681 けんおんくん

使ってくれる「お母さん」をイメージしてゼロからデザイン

オムロン ヘルスケアのデザインに対する意識を⼤きく変えたきっかけは2003年に、新しい電子体温計の開発に着手をしたことです。それまでは、技術や仕様、価格などを優先した商品開発が進み、デザインはそれらの条件を前提として考えていたため、様々な制約がありました。そこで、あらためて、使ってくれる人たちを中心に据え、電⼦体温計のあるべき姿をゼロから考え直すことに着手。「けんおんくん MC-670」は、デザイナー柴田文江さんとともに、子供の検温を見守るお⺟さんの優しさをイメージする「マザーズラブ」をコンセプトに、検温結果を表示する液晶画面を大きくしたり、体温計の先端を平らな形状にすることでわきにしっかりフィットしてずれにくくするなど、安⼼して使える形状となっています。

発売後には、多くのユーザーから「子供でも使いやすくて、安心して測ることができる」といった声がありました。

その後、オムロン ヘルスケアでは、ユーザーの目線に立ってデザインする考えを軸として、2007年に「ヒトを想うカタチ。」というデザインコンセプトを考案。そして、2018年には内容をさらにアップデートさせ、「こころが前を向くデザイン」というコンセプトが完成しています。

2019年に、特許庁より立体商標として登録されています。これは、「本体の形状を見ただけで、オムロンの体温計であると認識される」ということが認められたことを意味します。

「みんなが笑顔になれる」を目指して、人を中心とした発想へ進化

オムロン ヘルスケアは、なぜここまでデザインにこだわっているのでしょうか?それは、家庭で使用する医療機器やサービスを開発・販売し、人々の健康の実現を目指しているヘルスケア企業であるからこそ、提供する商品やサービスは誰もがいつでも手に取って安心して利用できる存在であって欲しいという思いがあるからです。正確に測れることはもちろんですが、持ちやすさや表示の見やすさなどの「使いやすさ」、そして威圧感のないフォルムや身近に感じるデザインといった「親しみやすさ」を大切にしてるのです。

そして現在、世の中は、価値観の共有が求められる時代に変わりつつあります。それに伴い、オムロン ヘルスケアのデザインに対する考え方も「モノ発想」から、カスタマー・エクスペリエンスを軸とした「人を中心にした発想」へと進化をしてきました。

そして誕生したのが「みんなが笑顔になれること」を最大のコンセプトにした「こころが前を向くデザイン」です。

デザインコミュニケーション部の荻原はこのように話します。

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デザインコミュニケーション部 荻原 剛

「私たちのユーザーは、どんな悩みや喜びを抱え、どんなことをすればその気持ちに寄り添って心をそっと後押しできるのかを考えることが私たちのデザイン思想の中心にあります。製品をデザインする時も、サービスやアプリケーションのデザインを行う上でも、企画や開発のメンバーと同じ出発地点に立つ上でも、実際のユーザーに出会い、向き合うことがとても大事なのです。例えば、喘息を持つ3歳の子供が、ネブライザーを使用している間にどんなことを考えているかは観察して読み取るしかありません。それと同時に、親が喘息発作をどれほど心配し、どれだけ苦労しているのか。ネブライザーを洗って乾燥させ、清潔に保ち、毎朝・毎晩、薬を入れて使う。時には逃げ回る子どもを捕まえて、終わったら「よく、できたね!」とほめて抱っこする。そのようなお客様がご使用になるシーンをちゃんと思い浮かべてデザインしていきます。そのほかにも、体組成計に乗るたびに痩せたかどうかドキドキしている、ひざの痛い人は朝ベッドから起きるのも大変など、そんな人たちの気持ちに寄り添って、少しでも「使いたい」という気持ちを後押しできる商品をつくり出していきたいと思っています。」

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心が前を向くデザインより

「こころが前を向くデザイン」というコンセプトは、こうしたオムロン ヘルスケアの取り組みや考え方をまとめ、社内だけではなく広く社会に伝えてその想いに共感してもらうことを目的に作成されています。背景にあるメッセージは、健康にまつわる人間の素直な感情を受け止めるということです。不安や恐怖から健康の問題を直視しようとしなかったり、面倒な気持ちから自身の健康管理を怠ったりなど、健康に対する消極的な気持ちも、否定することなく、汲み取りながら、心が少しでも前向きな気持ちで過ごすことができるようなデザインを追求していきたいという想いです。

このコンセプトにより、様々な製品が生み出されています。例えば、2020年に欧州で発売された小児喘息患者向け喘鳴(ぜんめい)センサーは、使用するご家族が使いやすく、子どもが嫌がらないものという観点から本体の形状や素材、音や光まで気を配ってデザインされています。また、測定結果を管理するアプリケーション「Asthma Diary(喘息日記)」では、患者本人とその家族が少しでも安心して治療に向き合っていけるよう医師との対話も含めてサポートできるよう、強い想いを込めて開発されました。

※喘息患者の症状が悪化する前段階で発生する喘息特有の喘鳴音を家庭で捉えるもの


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小児喘息患者向け喘鳴(ぜんめい)センサー

「こころが前を向くデザイン」を起点に「みんなが笑顔になれる」カスタマー・エクスペリエンスの提供に向けてオムロン ヘルスケアのチャレンジは続きます。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

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