小さなコミュニケーションが多様な人々の真のポテンシャルを発揮させる

~精神障がい者とともに働く職場から学ぶ~

日本の民間企業で雇用されている障がい者の数は、2019年に53万人*¹と過去最高を記録し、その数は年々増加しています。しかしながら、全国で206万人いるとされる精神障がい者(発達障がいを含む)*²のうち、実際に雇用されている割合はわずか3.3%*³にとどまっています。働きたくても働ける職場がないという社会的課題の解決に向けて取り組みを始めているオムロン ソフトウェアの職場を覗いてみます。

みんなで、よりよい社会をつくっていく

オムロンでは創業以来、障がいのある人たちの活躍機会の場を提供、創出しています。2018年からは、オムロングループの人事・総務・理財を担うオムロン エキスパートリンク(OLI)のダイバーシティ推進部が主体となり、特例子会社であるオムロン太陽、オムロン京都太陽に留まらずあらゆる部門で障がい者が個性や能力を発揮して成果に結びつける環境や仕組みづくりに取り組んでいます。OLIと共に、この新たな取り組みを進めているのが、ソフトウェア開発、およびサービス提供を通じて社会的課題の解決に取り組んでいるオムロン ソフトウェア(OSK)です。

OSKのコーポレートソリューション事業部(CS事業部)では、精神障がいのあるメンバーが活躍できる業務を提供することで、現在、精神障がいに含まれる発達障がい*⁴のあるOLIの社員5名が活躍しています。5名は、それぞれ、自閉症、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、アスペルガー症候群といった特性を複合的に持っていますが、それぞれの特性を十分理解したうえで、その能力を最大限に活かすべく、OLIとOSKの共同プロジェクトが進められています。

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個性を自身の強みにつなげていく

精神障がいのあるメンバーと、彼らを指揮・監督するOLI ダイバーシティ推進部の大橋、開発業務の依頼元のプロジェクトリーダーを務めるOSK CS事業部の石原という体制で始まったのが、4か月間で旧式のイントラのデータベースを新しいシステムへ移管させるという、社内のプロジェクトでした。

このような多様なメンバーのチームと働くのは初めてだった大橋と石原は、まず、精神障がいについて勉強し理解を深めました。一般的に精神障がいには、複数の仕事を同時にこなすことが苦手、気持ちの変動が激しい、不安を感じやすいといった特性があります。そうした特性にあわせて、それぞれのメンバーが無理なくタスクに取り組めるよう、必要となる業務を洗い出し、いつまでに誰が何をするのかのスケジュールを策定しました。そして、一つの作業が終わるまで次の仕事は依頼しないよう心がけ、また、メンバーに積極的に声をかけて、彼らの体調や心の中でストレスを感じていないかを確認しながらプロジェクトをリードしていきました。そして、無事に期間内にシステム移管は完了したのです。

「初めてのことばかりで不安を抱えながらのスタートでしたが、いざ、始めると、驚きの連続でした。」と石原は話します。その驚きとは、想定以上にメンバーのタスク完了が早かったことです。

「同時に複数の作業をせずに、一つずつタスクを完了させていくことになるため、プロジェクト全体が完了するのには少し時間がかかると思っていたのです。ところが、一つの作業を終わらせるスピードは想定以上でした。新しい業務にもかかわらず、理解が早いようで、作業を順調に進めてくれました。精神障がいの特性である、ひとつのことに集中しやすいという強みが発揮された結果です。おかげで、当初予定していたスケジュールよりも早くプロジェクトが進みました。」(石原)

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プロジェクトリーダーを務めたオムロン ソフトウェア CS事業部の石原

相手に不安を抱え込ませない、小さなコミュニケーションを積み重ねる

精神障がいのあるメンバーが、個性や能力を発揮して成果に結びつけていくには彼らに不安を抱えこませない、ともに働く仲間がお互いのことを理解しあえる環境や仕組みづくりも重要です。チーム内では、毎朝、30分間、業務状況を共有する時間を設けています。日々の進捗報告だけではなく、体調、業務の中で困ったところ、戸惑ったところ、なんでも自由に話せる場です。

ミスをしてしまったと不安そうに話すメンバーがいれば、「それはミスではないですよ。少し手順が違うだけですね」や「その作業は難しいですよね」といった相手の不安を和らげる声を掛け、業務報告をするメンバーに対しては「え!もうその仕事終わったのですか!早いですね、すごいです。」とお互いを褒める。「このプログラミング言語が分からない」と悩んでいれば、「では来週、みんなで勉強会を開きましょう」といった会話が自然に行われています。

このような小さなコミュニケーションによって、メンバー間に信頼関係が生み出されることで全員が存分に力を発揮でき、高いアウトプットにつながるのです。コロナ禍で続く在宅勤務下でも、社内ツールのリモート会議やチャット機能を活用して、頻繁にコミュニケーションを取れる体制を整えています。

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打ち合わせの様子

お互いの理解をより深めて、次へのステップを一緒に探していきたい

多様な障がい特性を持つメンバーは更に増え、プロジェクトも第二弾にまで進んでいます。

「次なるステップとして、ともに働く仲間がもつ特性への理解をより深めて、彼らの素質と力を引き出すことで彼らが活躍できる領域、業務範囲を増やしていくことをサポートしていきたいです。また、精神障がいのある仲間と働くことを通じて、ともに働くメンバーの強みを活かすためには、それぞれの特性を理解することが重要だということに気づきました。この考えは、今後スキルやキャリアの多様なメンバーと働く際にも通じるものだと思いました。」(石原)

今回の取り組みをベースとし、オムロンでの障がいのある人の就労機会の創出と活躍機会の拡大はさらなる広がりを見せています。個々に寄り添ってその人が持つ多様な能力、強みを存分に活かせる職場づくりを通して、障がいの有り無し関わらず、当たり前に、誰もが活き活きと働き活躍できる社会を目指し、OLI、OSKはこれからも取り組んでいきます。

*1:厚生労働省「令和元年度 障害者雇用状況の集計結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11992.html
*2:厚生労働省「障がい者の範囲より」
精神障がい者の中でも自閉症、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、アスペルガー症候群を持つ人のことを発達障がいとしています。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1031-10e_0001.pdf
*3:内閣府「令和元年版 障害者白書」
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r01hakusho/zenbun/pdf/ref2.pdf
*4:厚生労働省「発達障がいの理解のために」
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

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