「世界の最先端」を集めるコーポレートベンチャーキャピタル ~本気で世界を変えていけると信じている起業家と新しい世界を築くために~

オムロンは、深刻化・多様化する社会的課題を解決していくためには、既存の枠にとらわれないオープンイノベーションによる、新規事業の創出や既存の事業強化が大切であると考えています。そのために、これまでの事業では接点がなかったような、独創的な技術やアイデアを持つベンチャー企業と連携を深めていくため、投資を一つの手段として、コーポレートベンチャーキャピタルを2014年7月に設立しました。それが「オムロン ベンチャーズ株式会社(以下OVC)」です。OVCは設立以来6年間で15社のベンチャー企業に出資しました。初期に出資した農業関連のベンチャー「株式会社オーガニックnico」の事業アイデアや技術は、現在、中国でのアグリオートメーション事業に活かされ、オムロンの新規事業の創出につながっています。 今回は、オムロン ベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 井上 智子が世界の最先端の技術やビジネスアイデアによる新たな価値創造に向けたOVCの取り組みを紹介します。

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オムロン ベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 井上 智子

「世界の最先端」を集めるために

私は、2018年4月にOVCの2代目の代表取締役社長として着任しました。2017年から始まった中期経営計画 「VG2.0」では、ファクトリーオートメーションやヘルスケア、ソーシャルソリューションなどの注力ドメインを定め、オープンイノベーションによるソーシャルニーズの創造を加速し、将来の成長の種を仕込んでいくこととなりました。そのためには従来以上に、世界にアンテナを張って、まだ芽の出ていない最先端の技術やビジネスの潮流を把握し続けていくことが大切となります。そこで、OVCでは2018年から投資のスタンスを大きく変更しました。それまでは、日本を中心に、投資時から事業部との何らかの連携ができるベンチャーに少額ずつ出資を行ってきました。これを、アメリカ、ヨーロッパ、イスラエルといった世界の最先端の技術やビジネスアイデアが集まる地域の、シードを含むアーリーステージのベンチャーに、ある程度まとまった額の出資を行うことにしたのです。投資スタンスを変更した2018年から、アメリカ、イスラエル、イギリスのベンチャー企業7社に出資しました。いずれも独創的な技術やアイデアを持つ企業ばかりです。例えば2019年10月に出資したアメリカの「リアルタイムロボティクス社」は、産業用ロボットのリアルタイムモーションプランニングの技術開発を行っています。この技術は、現在は何百時間とかかる、ロボットがさまざまな障害物との衝突を回避する動きをプログラミングする時間を大幅に短縮することができます。実用化されれば、ロボットの普及が一気に進む可能性があります。現在は複数の工場で、検証を進めているところです。また、ヘルスケア分野でも2020年3月に出資したシリコンバレーの「エアエックスヘルス社」は、アメリカで遠隔患者モニタリングの独創的なビジネスモデルを展開しています。遠隔診療はコロナで脚光を浴びていますが、それ以前から患者にとっても医師にとっても病院にとっても必要とされていました。同社のビジネスモデルは、今後の医療を革新していく可能性があります。医療機器などの場合は特に、ひとつのベンチャーが開発から販売までを担うのは本当に難しい。ベンチャーが新しい技術を生み出し、それを現場へ接続して、企業がスケールアップを担うシステムがあることで、世の中に本当に必要な商品やサービスが広まっていく。OVCのようなコーポレートベンチャーキャピタルがあるからこそ生まれるイノベーションで、より多くの人が利益を享受できるようになるのではないかと、私は思っています。

ますます重要となるベンチャーへの出資の手は緩めない

コロナショックを経て、オムロンがこれまでバックキャストでとらえていた社会的課題は、ますます顕在化しています。特に、ロボットによる省人化や遠隔患者モニタリングのニーズの高まりは加速するでしょう。私は、既成概念にとらわれず自由な発想で世界をとらえ、本気で世界を変えていけると信じる世界中の起業家と一緒に新しい世界を築いていきたいと考えています。特に、データがあふれる現在の社会において、データを資産として有効に活用し、病気にならない世界、人と機械が協調した世界、自律した個の最適化と全体最適が両立するような世界の実現に向けて、新たな価値創造を目指していきたいと考えています。そのためにOVCは、将来のオムロンの成長の種につながる出資の手は緩めず、今後も積極的なベンチャーへの投資をこれからも継続していきます。

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