ホテル業界の課題解決に見る、常に進化し続ける社会的ニーズ実現の姿勢 コロナ禍での「社会的課題」の解決(5)

新型コロナウイルスによって生じたニューノーマル、つまり、「新たな常態や常識」の時代は、私たちに新しい生活様式をもたらしています。中でも、身近なものとして感じられるのは、飲食業や宿泊・観光業における「非対面」での接客への関心の高まりでしょう。ホテル業界においても、以前から顕在化していた人手不足の問題に加え、フロント業務に新たなニーズが生まれています。これに対し、ホテル業界のリーディングカンパニーであるアパホテルとオムロンが、セルフチェックイン端末「スマーレ」を通じて解決に取り組んだ事例をご紹介します。

コロナ禍での「社会的課題」の解決 シリーズ一覧
スペインのオムロン社員が人工呼吸器開発プロジェクトに参画
コロナ禍でも「医療用吸引器の提供を止めない」。イタリアのオムロン社員の挑戦
世界最大級のマスクメーカーとなったBYD社をサポートしたオムロン中国の挑戦
消毒作業を自動化する紫外線光照射器ロボットで、みんなの健康と安全を守る
ホテル業界の課題解決に見る、常に進化し続ける社会的ニーズ実現の姿勢
"ニューノーマルな駅サービス"を実現した駅オートメーション

ホテル業界の顧客・従業員の安全確保の核となる「非対面」接客

スーパーのレジをはじめとして、病院の受付、学校の事務局など、接客や人との対話が行われる多くの場所で、アクリル板やビニールを用いた透明の仕切りは、瞬く間に見慣れた光景となりました。新しい生活様式の下で、従業員や利用者の飛沫感染を防止して安全を確保しようとする努力が、そのような設備の急速な普及を後押ししています。
さらに顧客・従業員の安全を最大限に確保できるように「非対面」で接客を行うことへのニーズが高まってきました。中でも、宿泊時のチェックイン業務において、人と人との接触が発生するホテル業界では、「非対面」で宿泊手続きを済ませられるセルフチェックインシステムの採用が急速に進みつつあります。

オムロン ソーシアルソリューションズは、ホテル業界に対するセルフチェックイン端末「スマーレ」の導入を2018年から進めてきました。これはもともと省人化などの目的で導入が進められていたものですが、コロナ禍において、安全を守るためのシステムとして新たに注目されたのです。

コロナ禍以前から進んでいたスマーレのプロジェクト

スマーレ開発へとつながるホテル業務のオートメーション事業に、オムロンが参入したのは2018年のことでした。当時の日本では、訪日外国人の増加を背景に、ホテルの建設ラッシュが起こっていました。
このとき、旅客・宿泊市場の需要は好調そのもので、ホテル業界はインバウンド需要を取り込むために施設の拡充を急ぎ、ホテル数も急激に増加していたのです。ところが、その舞台裏では、人材の確保が難しくなり、人手不足という深刻な社会課題が発生していました。生活衛生関係営業の「従業員の確保をめぐる環境」 アンケート調査結果でも、「従業員が確保しにくくなった」業種ランキングの1位がホテル業界*1であったほどです。

そこでオムロンは、この課題を解決するために、シェアNo.1の自動券売機を含む鉄道事業で培った省力化、遠隔監視、センシング技術の強みを活かして、セルフチェックイン端末のスマーレを開発しました。
このときに誕生した自立型スマーレは「お客様自身の操作で簡単にチェックイン行為を完結出来る」ことをコンセプトとして、非対面でチェックインまで完結することが可能な端末です。また、同時発売された卓上型スマーレは、比率の多い事前予約/事前決済または当日クレジット決済のお客様向けに機能をミニマイズ化したモデルで、「フロント係の省人化」 とお客様が決済用端末まで移動する手間のない「ワンストップチェックイン」 を実現していました。

自立型スマーレ 卓上型スマーレ
自立型スマーレ
卓上型スマーレ
*1:株式会社日本政策金融公庫 「雇用動向に関するアンケート調査結果」 (生活衛生関係営業の景気動向等調査特別調査結果2016年10~12月期)

時代のニーズの変化と共にあるスマーレの進化

このように、社会課題の解決を目指したスマーレは、変化するニーズに合わせて、更なる進化を遂げています。
2020年8月には、ホテル業界のリーディングカンパニーであるアパホテルと共に新型コロナウイルス禍の中でも高いホスピタリティを可能にする業界初"アプリチェックイン専用機"を協業開発しました。

これは、アプリ会員証のQRコードによるルームキー発行に特化したチェックイン機で、QRコードを読取口にかざせば、画面操作不要でルームキーを受け取ることができます。

アプリチェックイン専用機

アプリチェックイン専用機

アパホテルの知見と、オムロンのオートメーション技術の融合によって生み出されたこのアプリチェックイン専用機について、ソリューション事業開発部 大橋 亮司は、このように話します。
「お客様を待たせる時間を1秒でも短くし、お部屋まで案内するという高いホスピタリティを実現しました。しかし、アプリチェックイン専用機が実現したのは、単なるチェックイン時間の短縮ではありません。多くの人が行きかうフロントからお客様を早くお部屋まで案内し、ルームキーの手渡しをなくすことで、人と人の接触による感染リスクも最小化します。さらにフロント従業員の業務を効率化することで、空いた時間をおもてなしに従事することが可能となります。単なる効率化ではなく、ホテルの経営、スタッフ、利用者のすべてにメリットがあるソリューションを実現したのです。」

オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社ソリューション事業開発部 大橋 亮司<

オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
ソリューション事業開発部 大橋 亮司

今後、オムロンは、ホテル事業全体のオートメーション化に向けて、遠隔集中でのホテル運営管理やロボットによる清掃、見守りなどの取り組みにもチャレンジしていくことを計画しています。このように、ホテル業界の労働力不足を解消し、安心・安全・快適な生活サービスのさらなる向上に貢献していくことも、新しい生活様式への対応を迫られる社会に技術で奉仕する、オムロンの進化し続ける姿勢を示しているのです。

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