フードリサイクルで究極の地産地消を!

滋賀県立湖南農業高校とオムロンが地域一体で取り組むフードロス削減と地域活性化

まだ食べることができる食品を廃棄してしまうフードロス。日本では年間約612万トン*¹、国民ひとりあたりに換算すると1日約132g(お茶碗一杯のごはんの量)になります。2019年10月に施行された「食品ロス削減推進法」では、多くの食料を輸入している日本が真摯に取り組むべき課題として、社会全体で「食べ物を無駄にしない」という意識を高めることが重要とされています。

今回は、この社会的課題に、オムロン草津事業所と滋賀県立湖南農業高校(湖南農高)が地域一体となって取り組んだ、フードリサイクルの活動をご紹介します。

草津事業所のフードロス削減と新しい挑戦

滋賀県草津市にあるオムロン草津事業所は、工場を自動化するために必要な制御機器を生産するオムロンの主力拠点で、中では自律型の搬送ロボットが走り回り、IoTを駆使した先進生産技術による製造ラインが並んでいます。

滋賀県はその面積の6分の1を琵琶湖が占め、その豊かな生態系を保全するため環境活動が盛んです。この地で1961年から操業をしている草津事業所も、製造工程のCO2排出量削減をはじめとして様々な環境の取り組みを行っています。1日に約1,700人の社員が利用する食堂も例外ではありません。2000年からフードロス削減に取り組み、食べ残しが起こらない工夫をしながら、それでも出てしまった野菜くずなどの生ごみを敷地内ですべてたい肥化し、2000年以降は生ごみ廃棄ゼロを実現してきました。その取り組みを加速させたのは、2015年に所長に就任した目片 良和(めかた よしかず)です。目片は社員の環境意識をもっと高め、環境と、地域社会に貢献できる事業所にしたい、と考えました。

そこで着目したのが草津事業所のすぐ向かいにある湖南農業高校です。湖南農高は琵琶湖の南の湖南地域で唯一の農業単独の高校で、地域と連携した活動で地域農業を支えています。これまでもオムロンで作ったたい肥を、湖南農高へ寄付し野菜作りに役立ててもらっていましたが、それ以上の交流はありませんでした。早速、湖南農高の井上 升二(いのうえ しょうじ)校長に相談をしてみると、校長も「生徒自身が育てた野菜が、学校外の食堂で実際に使用されることで、生徒のモチベーション向上に繋げたい。」という思いを持っていたことが分かったのです。

社員の環境意識を高め地域に貢献したい目片と、地域社会と連携した教育活動を目指す井上校長の二人はすぐに共鳴。こうして、オムロンの提供したたい肥を使って湖南農高生が野菜を育て、収穫した野菜をオムロンの食堂で提供するという、フードリサイクルが始まりました。

211_02mekata_inoue-2 (1).jpg写真左から:草津事業所所長 目片 良和、湖南農高 井上 升二校長

互いに「意識」することでフードリサイクルを加速していく

実現には困難もありました。生ごみから作るたい肥は、季節やごみの種類によって品質にばらつきが出たり、その臭気で近隣に迷惑をかけないように保管場所を確保する必要があり、すべてを農高に寄付できないときもありました。草津事業所は新たな設備を導入するなど工夫を重ね、臭気の無い品質の一定したたい肥を作れるように改善。また、フードリサイクルの開始をきっかけに、生徒たちを草津事業所に招いて、食堂の内部や、野菜が納品される様子を見学してもらう取り組みも始めました。生徒たちにとっては、自分の野菜を実際に食べる社員の顔が見えることで、野菜作りのモチベーション向上につながっています。オムロンでも、湖南農高から購入した野菜を使ったメニューに表示をするなど、社員に、生産者を意識してもらえるような工夫をしています。

こうして、お互いの顔が見えたことで社員の環境意識が高まり、食べ残しが減少。食堂での地道な分析と対策も行った結果、草津事業所の2019年の生ごみ排出量は、フードリサイクルを始める前の2015年に比べて半減したのです。

「私たちが出したごみが、野菜となって還り、社員がそれを意識して食べる。地産地消の究極のカタチが実現できました。社員は日々食堂を利用するだけで、簡単にフードリサイクルに参加できます。社員食堂での食事を通して、社員が、地産地消やフードロスなどの食にまつわる問題を自分ごと化するきっかけになっています。」(目片)

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湖南農高から購入した小松菜とトマトを使ったサラダ


人と人、地域を繋げるフードリサイクル

フードリサイクルから始まったオムロンと湖南農高との人的交流は、ますます加速しています。毎年夏には、湖南農高産の野菜即売会を開催。もぎたてのトマトやキュウリなどの夏野菜が並び、社員たちが心待ちにするイベントになりました。さらに今年は、オムロンの社員とその家族が農高生と共に、種まきから収穫まで行う野菜作り体験を計画しています。

「人と人の交流をさらに深めて、将来、農地を使って、農業に関わる商品開発を『湖南農高×オムロン』で実現し、地域を活性化していきたい」と目片は意気込みを話します。


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今年は湖南農高の畑で野菜作り体験を計画中

このような地域社会に貢献する環境への取り組みが評価され、2019年にオムロン草津事業所は「令和元年度滋賀県低炭素社会づくり賞」*²を受賞しました。その受賞をきっかけに、オムロンと湖南農高前を通り、琵琶湖へ続く県道を「草津環境ストリート」と定め、草津市役所、学校、沿道の企業などが連携して、地域全体で環境活動の推進を盛り上げていく動きも出てきました。

フードリサイクルからスタートした人と人との繋がりが、地域社会も巻き込み、循環型社会への大きな波を呼び起こそうとしています。

*¹ 環境省 「我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成29年度)の公表について」

「滋賀県低炭素社会づくり賞」とは

滋賀県が、低炭素社会づくりに関する優れた取組を行った県民、事業者および民間団体の功績をたたえるために実施している表彰制度。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

この技術の最新動向をお届けします。

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