多様性と向き合い、ともに働く仲間のために。ひとりの「おせっかい」社員が職場を変える

~日本初の福祉工場 オムロン太陽の改善活動~

ここ最近、さまざまな場面でダイバーシティ&インクルージョンという言葉が注目を集めています。性別、国籍、障がい、年齢など、異なる背景や価値観を持つ多様な人財を活かし、個々の能力を最大限に発揮できる組織を目指す考え方です。みんなにとって働きやすい、誰もが活躍できる職場を作り出すには何が大切なのでしょうか。社員の半分以上が障がいを持つ、オムロン太陽の製造現場での改善活動をもとに、紐解いていきます。


日本初の福祉工場 オムロン太陽 別名「車いすのある工場」

オムロン太陽は、日本初の福祉工場を1972年に設立しました。以来、一時期を除き黒字経営を続けています。その現場では、障がいの有無に関わらず、すべての人にとって働きやすい職場にするため、働く社員一人ひとりが日々、自らの創意工夫を凝らし、みんなで改善していくという文化が根付いています。



「できない」という先入観を捨て、だれでもできる作業へ変えていく

オムロン太陽で働く、曵汐 浩文(ひきしお ひろふみ)も、働きやすい職場に向け改善を続ける一人です。自らも足に障がいを抱える曵汐は、1984年に入社以来、製造現場、技術開発、品質管理などの業務を経て、2018年から生産ラインのチームリーダーを務めています。やりにくい作業、無駄な作業はないか?みんなが安全に簡単にできる作業になっているか?様々な観点で徹底して現場を見て回り、改善活動に日々取り組んでいます。
ある日、曵汐はいつものように現場を歩いて回る中で、製品に使う部品の一つである収縮チューブが足りなくなっていることを見つけました。この収縮チューブを準備するには、1本の長いチューブを既定の長さにカットする必要があります。手の空いている人に作業を依頼すると、カッターナイフを使う作業なので自分はできない、と答えが返ってきました。カッターを使うことで危険が伴うため、作業者が限定された工程になっていたのです。また、メンバーたちも自分の能力ではできないと、あきらめていました。


生産ラインのチームリーダー 曵汐生産ラインのチームリーダー 曵汐


「これは、何とかしなければ―――。」

曵汐は、この作業を誰もが安全に、そして簡単にできるようにするため、治具を製作することを思いつきました。現場で働く3人の仲間に話を聞くと、カッターでの作業が危ないことに加え、毎回長さを定規で測定しながらカットするので、作業がやりにくいという新たな課題も出てきました。曵汐は、これを解決するため、治具の設計を行い、何度も試作を繰り返しました。


改善作業に取り組む様子改善作業に取り組む様子


そうして、誰でもできるユニバーサルな作業へ改善することに成功しました。カッターナイフの代わりに市販のハサミを採用し、収縮チューブを一定の長さでカットできるようにガイドを装着。これにより、ガイドに当てるだけでカットできるようになり、障がいの有り無しのみならず、右利き左利き問わずだれもができる作業となり、人によっては1個あたり40秒かかっていた作業時間が、なんと2秒に短縮されました。


0909.jpg改善前後の作業手順


年間で190時間の効率化と、品質・安全性の向上を実現したこの改善は、令和2年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰における「創意工夫功労者賞」* を受賞しました。



表彰式(左:曵汐)表彰式(左:曵汐)


「自分の作った治工具によって、作業がやりやすくなったと喜ぶ仲間の顔、できる仕事の範囲が増えたことに喜び、新たな仕事に意欲的に励む姿を見ると、嬉しくなってもっとより良いものを作ろうと思うんです。ひとつずつ改善を積み重ねていくことで、仲間の能力の発揮を後押ししていきたいです。」(曵汐)

そして、同じ職場で働くメンバーは曵汐の取り組みをこのように話しています。
「おせっかいなんです。(笑) 曵汐さんは、いつも作業現場を歩き回っていて、やりにくそうに作業している人を見かけると、声をかけてすぐに改善しようとするんです。そうやって、誰もができる作業現場を作っていこうと日々改善を続けていますね。」


一人ひとりの改善が、みんなにとって働きやすく、活躍できる職場をつくる

曵汐をはじめとして、オムロン太陽では働く社員一人ひとりが日々創意工夫を重ねた改善提案活動を行っています。その改善提案は19年度では年間174件にものぼり、2011年度からの9年間で1263件にもなります。
一人ひとりが、ともに働く仲間のことを考えて行動し、改善をしていくことよって、目の前の仲間だけではなく、みんなにとって働きやすい、活躍できる職場を生み出します。社員一人ひとりによるダイバーシティ&インクルージョンの実現こそが今のオムロン太陽を作っているのです。


オムロン太陽で働く従業員の集合写真オムロン太陽で働く従業員の集合写真


*科学技術分野の文部科学大臣表彰について
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大臣表彰を定めています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/hyoushou/1414653.htm

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