コロナ禍でも「医療用吸引器の提供を止めない」。イタリアのオムロン社員の挑戦

コロナ禍での「社会的課題」の解決(2)

イタリアが新型コロナウィルスの脅威と闘う中、イタリアにあるオムロンヘルスケアの開発・生産拠点(以下、OHA)では増大する医療用吸引器の需要に応えるため、全力で奮闘を続けています。医療用吸引器とはいったいどんな機器なのでしょうか?そして、この機器がコロナウィルスとの闘いにおけるカギになる理由は?

2020年4月、ほぼすべての産業で在宅勤務の規制が行われる中、イタリア政府は医療システムの強化のため、「医療機器製造」を必須業種に指定し、規制期間中も事業を継続する対象としました。この決定により、OHAの医療用吸引器を担当する16名のチームは、厳しい感染防止対策を講じた上で、いち早く現場に戻って、コロナウィルスとの闘いに欠かせないこの製品を病院に供給するという、極めて重要な課題に向けた取り組みを開始しました。人工呼吸器の話題はよく耳にしますが、吸引器が人々の話題にのぼることはほとんどありません。どのような機器なのでしょうか?

医療用吸引器

医療用吸引器とは、患者の気道に溜まった血液、粘液、体液、ガスなどを吸引して排出することで、患者の呼吸を助ける装置です。人工呼吸器を使った治療を受けている患者は、咳やくしゃみをして自然に分泌物を除去することができないため、吸引器を使って分泌物を取り除く処置が不可欠です。イタリアでは患者の数が増大し、ICUのベッド数のキャパシティを超えそうな状況が続いていました。医療機関が最適な治療を提供し患者の早期回復を実現に向け支援することは、人の生死にかかわる重要な任務となります。

1995年に医療用吸引器の生産を開始して以来、OHAはこの分野で長年の経験を積み重ねてきました。医療用吸引器の動作原理は、真空ポンプの減圧によって得られる陰圧を使って、吸引チップから吸引管を通して血液、体液、個体粒子等の物質を吸引し、吸引ビンに排出するというものです。この原理は、高度なオムロンのネブライザーラインアップに含まれる鼻水吸引器に使われている原理と同じです。

OHAの医療用吸引器がコロナウィルス対策として特に優れているのはなぜでしょうか?その秘密はこの製品の、持ち運びのしやすいポータブルなデザインにあります。イタリアの病院では、診断前の重篤な患者が管理のいきとどかない状態のまま院内に入るのを避けるために、屋外にICUを設置しており、そこでまず来院した患者のトリアージ(緊急度判定)を行います。診断が済んで、院内に入ることができるようになるまで、患者の治療はこうした屋外の救急施設で行われますが、施設内に医療機器を動かすために必要な空気システムが完備されているとはいえません。OHAの携帯型吸引器は、救急車の中での使用を目的に作られており、屋外のICUのようにシステムが完備していない施設でも使用することができるため、新しい社会的課題に応える製品だといえます。

新型コロナウィルス感染が拡大する状況の中で、OHAの医療用吸引器に対する需要は飛躍的な伸びています。この事実は、便利かつ効果的、また携帯が可能な高品質の呼吸器疾患治療用の機器に対する社会のニーズがいかに大きいかを示しています。OHAは、家庭用・医療用の呼吸器関連機器分野のリーダーとして、人々が身体の不調によって日常生活を制限されることなく、健康で、いきいきとした生活を送るためのサポートをするという重要な役割を担っています。この混乱状況の中でOHAのメンバーが示した勇気と素早い対応は、 オムロンヘルスケアヨーロッパが掲げている"zero compromise on healthier lives"の実現に向けた固い決意そのものなのです。

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