未来の工場の実現に向けて ドイツの自動車メーカーのファクトリーロジスティクスにイノベーションを

欧州のモノづくり大国ドイツ

1950年代以降、日本と同じように工業やモノづくりによって経済を発展させてきた工業国ドイツ。多くの人にとって馴染みのある自動車産業以外にも、機械、化学、製薬、重工業、ITなど幅広い分野で発展してきた。人口およそ8000万人と、規模と年代分布の両面で日本と近しいドイツは、日本と同じように高齢化社会や労働コストの上昇、そして熟練技術者の慢性的不足などの社会課題を抱えており、近未来のモノづくり現場実現に向けて生産性や品質を維持・向上させると共に、フレキシブルな生産ラインを構築する必要性がますます高まっている。そのような社会的課題を解決するため、オムロンでは、戦略コンセプト "i-Automation!"※のもと、製造業のモノづくり現場の⾰新に取り組んでいる。"i-Automation!"とはオムロンが提供する価値の⽅向性を⽰したコンセプトワードであり、3つの"i"「制御進化(integrated)」「知能化(intelligent)」「人と機械の新しい協調(interactive)」からなる。

今回のプロジェクトは、i-Automation!を軸として、ドイツ有数の自動車メーカーの生産現場で搬送やロジスティクスの自動化によってモノづくり課題の解決を試みたことから始まる。ストーリーの中心となるのは、ヨーロッパのオムロン制御機器事業のアレクサンダー氏だ。

ヨーロッパのオムロン制御機器事業のアレクサンダー氏ヨーロッパのオムロン制御機器事業のアレクサンダー氏
i-Automation!に関して詳しくはこちらから

オムロンの作り出す共感の輪

i-Automation!を具現化した多くの自動化ソリューションは、FA(工場の生産システムの自動化)を創業から続けてきたオムロンの現場課題を捉えたアプリケーション提案だ。また展示会などではこれに加えて、コンセプトロボット「フォルフェウス」(オムロンの先端コア技術である"センシング&コントロール + Think"を盛り込んだ卓球ロボット)を体験することができる。オムロンの具体的なソリューションと未来のビジョンは、どちらもオムロンの創業者である立石一真の「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」の理念から発している。こうした時代を超えた理念に、共感する人々の輪は今もなお拡がり続けている。自動車業界を含むさまざまな業界の顧客やcts GmbHも例外ではない。

cts GmbHは、ドイツに本社を置く国際的なSIer(システムインテグレーター)でオムロンとは関係の深い企業だ。今回のプロジェクト以前にも、オムロンがソリューションプロバイダーとしてモバイルロボットを活用した搬送自動化アプリケーションを提供し、cts GmbHがモバイルロボットに搭載するコンベア機構の開発、顧客のMES(製造実行システム)とのインターフェースの設定などのカスタマイズを提供する、という形でタッグを組み、数々の企業で実績を積んできた。

ドイツの展示会オムロンブースにて

ドイツの展示会オムロンブースにて

cts GmbHと自動車製造で積み上げてきたノウハウと知見

ドイツには日本でもよく知られるようなプレミアムブランドの自動車メーカーが多くあるだけでなく、これらの企業に部品を提供する、世界的な自動車部品サプライヤーも多く存在する。こうした自動車部品サプライヤーとの実績と経験も今回のプロジェクトの成功要因だったとアレキサンダー氏は語る。

「自動車部品のメガサプライヤーでの成功経験が私たちに自信と実績をもたらしたと考えています。そしてそれが、オムロンの技術力と信頼性の高さにつながりました。このような現場課題の解決を通して、最大100台までのモバイルロボットを同時に制御・運用するシステムを実現するなど、オムロンはモバイルロボットによる搬送自動化の技術とアプリケーションを進化させてきました。」

モバイルロボットを高度に運用することができれば、工場内の物流=ロジスティクスの自動化を可能にできる。モノづくり現場の革新に向けて、生産工程内で製品や部品を運んだり、積み替えたりするコンベアや従来型の生産ラインを無くし、近未来型の生産現場へ移行するためには、搬送自動化は非常に重要な要素となるのだ。今回のプロジェクトでも、ロジスティクスの自動化にあたって、まず工場内で働く人達の歩行距離を計測した。そして作業員1人あたり毎日8-10kmの歩行をしていることを突き止め、ロボットで代用することを考えた。今ではクライアントはオムロンのモバイルロボットと関連ソリューションを主要な生産拠点で導入し、ロジスティクスの全体作業量の多くを自動化に成功している。

「恩恵は自動化だけではない」そう語るのはアレキサンダー氏だ。

「工場内のロジスティクスをモバイルロボットによって自動化したことによって、働いていた人達はよりクリエイティブな仕事ができるようになったとクライアントから聞いています。自動化によって効率性を追求することで考える時間、アイデアを議論する時間、生産設計を見直す時間など、多くの時間が生まれました。その結果、人はより生産的でクリエイティブな仕事ができるようになったのだと思います。オムロンの目指す人と機械の融和が実現できたのです。」

生産環境に調和するオムロンのモバイルロボット

アレクサンダー氏は今回のプロジェクトの主役でもある、モバイルロボットの魅力について次のように話した。

「一言で言えば柔軟性。これまで、メーカーはロボットの導入に合わせてベルト、ライン、および工場全体のレイアウトを変更する必要がありました。しかし、オムロンのモバイルロボットは、既存のラインやレイアウトを変更することなく現場環境に柔軟に対応できるため、自動車製造業にとっては大きなメリットとなります。時間と予算を大幅に節約することができます。」

オムロンのモバイルロボットは高水準の安全性の他に機能面が充実している。例えば、前述のとおり最大100台までのロボット群管理を可能にし、メンテナンスを容易にするEnterprise Managerと呼ばれるソフトウェアシステムだ。直観的な設定画面により、個々のロボットに割り付けるタスクやルートの設定、各モバイルロボットの状態を簡単に確認でき、導入したロボットを最大限に活用できるようにユーザーの現場環境に合せて最適化することができるのだ。モバイルロボットのモノづくり現場との親和性、柔軟性についてアレキサンダー氏は続ける。

「Enterprise Managerは工場内の効率性を最大限に高め、生産現場の柔軟性を上げることを目的としています。また、モバイルロボットの導入に際しては、各顧客工場のITインフラやセキュリティーのルールに従う必要があるため、オムロンはスペシャリストによる技術サポートにも万全を期しています。」

私たちは、いま1つのアイデアがイノベーションとなり、短期間の間に業界標準にもなる変化の激しい時代に身を置いている。こうしたニーズや技術の変化の中で、モノづくりの柔軟性が成功のキーとなっていくことは言うまでもない。マーケットの変化の規模が大きければ、それだけ変化への適応力が重要になるのである。その中でオムロンは、人と機械の融和を実現するオートメーションに注力し、モノづくり現場の革新へチャレンジしつづけていく。

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