CES 2019 TechTalk:これまで、そしてこれからの「人と機械の融和」

Stanford mediaX × MIT Media Lab × OMRON

米ネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2019のイベントレポート。第二弾にあたる今回は、スタンフォード大学メディアXとMITメディアラボからゲストを招いて開催した「Tech Talk(テックトーク)」。今日、そして未来の「人と機械の融和」をテーマに、各パネリストの熱い議論が展開された。

【司会】 
グレン・ギルモア-ラットガース大学デジタルマーケティングエグゼクティブプログラム開設当初からの教師陣の一人。エマージングテクノロジー、ブランドマネジメント、デジタルマーケティング、クライシス・コミュニケーションや国際ソーシャルメディア法についてフォーチュン500*のメンバーに教える。フォーブス誌ではソーシャルメディアインフルエンサーとしてトップ20にランクイン。

*...米フォーチュン誌による企業番付。

【参加パネリスト】
V.マイケル・ボーブ博士-MITメディアラボのオブジェクトベースメディアグループ長。デジタルと物理世界の関わり合いを研究する。ユーザーインターフェイス、ソフトウェアデザインなどの分野で100を超える論文を発表し、関連する発明の特許も取得。

ジェイソン・ウィルモット氏-米スタンフォード大学メディアX広報部長。メディアXはH-STAR Instituteとの合同教育プログラムで、 スタンフォード大学教育大学院の24の学際研究ラボと連携しながら、未来の産業のIT技術の活用を検討する。

デロン・ジャクソン-オムロン アデプトテクノロジーズ株式会社最高技術責任者(CTO)。オムロンのファクトリーオートメーション(FA)技術と組み合わせ、高度化する製造業の課題解決に取り組む。

諏訪正樹-オムロン サイニックエックス株式会社代表取締役社長兼所長。大学の研究機関とも連携し未来の技術や近未来デザインについて研究する。社会のニーズに応じるための最適な設計・建築を追究。

今までの人と機械の関係性

トークは、従来のロボットに関する一般的な捉え方から始まった。オムロンのジャクソンは、ロボットは今まで「人と直接的に関わるものではなかった」と言う。

「ファクトリーオートメーションやロボットと聞いて連想するのは、高速で高精度なマシンが何かしらの柵に囲まれて、作業している様子です。直接的な関わり合いが、人と機械の間には無いという感覚なのです。」

ただ、状況は変わり始めていると、ジャクソンは指摘する。オムロンの新製品は、人のそばで稼働し、人と関わり合うことが前提にあるのだ。
「鍵になるのはAI」とジャクソンは語る。AIは、オムロン独自の「センシング&コントロール+Think」のうちThinkにあたる。

TechTalk _377_02.jpgオムロン アデプトテクノロジーズ デロン・ジャクソン

諏訪もこれに同意し、人と機械の共存について持論を展開する。
「私からすると、全ての車が自動運転になるということは想像できない。都市環境、たとえば東京においての場合もそうだと思います。機械――この場合は車ですが――と運転手とのコミュニケーションが重要になってきます。そこには調和が不可欠で、様々なタスクを分担する事が必要になってきます。」

融和の鍵は「ダイアログに基づいた関係」

人と至近距離で稼働するロボットの場合、お互いにコミュニケーションをとらないことには安全性やスムーズな連携は実現できない。ウィルモット氏は、この関係性を『ダイアログ(対話)に基づいた関係』と形容する。

「まず、人が中心となることが大前提です。人が台詞を書き、脚本を書く。もし何らかのテクノロジーと関係を構築し続けるとなると、人がそのデザインを担う必要があります。これはどのテクノロジーでも同じで、ロボットであろうと、AIであろうとマシンラーニングであろうと変わりません。」

加えて、ウィルモット氏は脚本の重要性を訴える。

「アメリカで使用されるべき脚本と日本で使用されるべきものはおそらく違うでしょう。ダイアログに含まれる人間らしい要素を保つことで、信頼を得ることができる。信頼はテクノロジー活用において極めて重要なテーマです。」 

汎用的な設計でありながら、いかに多彩で細やかな対応をできるものを作るか。開発は一筋縄ではいかない。

TechTalk _377_03.jpgスタンフォード大学メディアX ジェイソン・ウィルモット氏

ボーブ博士も頷く。「ロボットのような機器を使用するとき、プログラミングという過程が今まではありました。プログラマーが集まって、その機器のプログラミングをして、いくつかの行動を取れるようにするわけです。」

従来のロボットでは、予測可能な行動を取らせることで、信頼性を保証してきたのだ。

「しかし我々はその段階から――オムロンが示してくれているように――一歩進み、命令を実行させるのではなく、ロボットに修行をさせ、師弟関係の様な形を取ることになると思います。」

ボーブ博士の説明によると、これからのロボットは「事前に決定された命令に沿って行動する」のではなく、「人から学習すること」が期待されるという。

「例えば、あなたが車を運転していて、交差点に来たとします。その時、あなたは他の運転手と目配せをし、彼らがあなたのことを見ていることを確認するでしょう。そうやって、何らかの社会的シグナルを交わすわけです。」

諏訪は、そのようなコミュニケーションが取られる際の不確定要素についても言及。

「人と機械は、『予測可能な不確定要素を含む枠組み』の中で行動できなければなりません。各場面を構成する登場人物や場所は違うかもしれませんが(不確定要素)、社会的シグナルなどの予め定められたルールに則って行動する必要があります(予測可能)。」

たとえ事前に行動を定められない場合でも、ロボットは適切な行動を取ってくれる――そう信じられなければ、信頼は生まれないのだ。

TechTalk _377_04.jpgMITメディアラボ マイケル・ボーブ博士

TechTalk _377_05.jpgオムロン サイニックエックス 諏訪正樹

ロボットは自分でプログラミングできるようになる

諏訪とジャクソンは、オムロンのロボットが取るべき次のステップについて語った。

「ロボットが自分で、自立的にプログラミングを行い、自立的に学ぶようになること。プログラミングというのは特定の言語で何行も命令を書き、それを実行させているようなものです。しかし、それがボーブ博士の言うように、師弟関係の様なものになれば、合図を理解したり、コミュニケーションを取ったりすることがもっとずっと容易になるでしょう。」

ボーブ博士はキーワードとして『感情知能(emotional intelligence)』を挙げる。感情知能とは、一般的な知能に対し、自己や他者の感情を察知し、適切な行動を取るために必要な知能を指すコンセプトだ。人工知能への応用をはじめとして、人間社会を理解するための鍵として近年注目を浴びている。

「人間は他の人だけでなく他の生き物、例えば犬や猫も感情知能を示すと期待しているところがあります。ですから、苛立ちを感じ、声のトーンや表情を変えたときに、それに他の人たちが気づくことを求めます。そして、私たちの社交の合図を産業ロボットや家庭用機器が理解するための技術ベースは少しずつ確立されてきています。私たちの合図を理解した上で、それに合わせて行動してくれる機器が近い未来に出てくることでしょう。」

「人と機械の融和」をデザインするにあたって、中心に来るべきなのは人間だ。人間的シチュエーションや人間の思考パターン。これらを基盤としてデザインしたものであれば、人が機械を信頼し、共に働き、教え合うこともできるかもしれない。

オムロンの「人と機械の融和」の実現へ向けての旅の裏には、こうした探究があった。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

この技術の最新動向をお届けします。

オムロンと一緒に、ものづくり/ヘルスケア/モビリティ/エネルギーマネジメントの

社会的課題を技術で解決しませんか?

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