【業界初】 クラウドではなく、マシンコントローラーそのものにAIを搭載 “AI技術で成長し続ける未来の工場”へ

「設備の機能を最大限にいかして省人化しつつ、不良品をゼロにする――」
製造業従事者であれば誰もが思い描くであろう理想の工場。そのようなモノづくりの現場が目指す未来を支えていくためオムロンが作り上げたのが、AIを使ってリアルタイムに制御を行う、業界初の「AI搭載マシンオートメーションコントローラー」だ。

AIと制御の融合でモノづくりの未来を変える

生産ラインや装置を制御するPLC(プログラマブルロジックコントローラー)機能と、AIを融合させることで、リアルタイムでの制御を可能にした業界初の「AI搭載マシンオートメーションコントローラー」。熟練技能者の勘・経験等の暗黙知を形式知化し、装置状態の「いつもと違う」を超高速・高精度に検出することで、瞬時に発生する品質の不良や設備の停止を未然に防止することができる。
この業界初となる開発プロジェクトは、果たしてどんな道を辿ってきたのだろうか。

リアルタイムAIと制御を融合したAI搭載マシンオートメーションコントローラーを開発

前代未聞"コントローラーそのものにAI搭載"へのチャレンジ

AI搭載マシンオートメーションコントローラーの開発がスタートしたのは2016年4月。

「前途多難とはこういうことかと身をもって感じましたね。」(笠井)

当時を振り返りながらそう話してくれたのは、AI搭載マシンオートメーションコンローラーのプロダクトマネージャーを務める笠井 貴光だ。


目指すは、止まらない、性能を最大限に発揮する、不良品を作らない、"人と機械が互いに成長する未来工場"。


「まずは何から手を付ければいいのかを、考えるところからのスタートでした。」(川ノ上)
川ノ上 真輔もまた、今回のプロジェクトの開発に携わった一人。彼らがまず取り組んだのは、本テーマにおける"AIとは何か"を定義し、そしてAIをどこに搭載するのが最適なのかを議論することだった。

「最近よく耳にする画像認識や音声認識などは、クラウドにAIエンジンを搭載しています。しかし、私たちはクラウドではなく、現場の装置層にあるコントローラーにAIエンジンを搭載することにしたのです。」(笠井)


AIを装置層に搭載する。


そこには明確な目的があった。
例えばスマートフォンの音声認識はクラウドを使用しているが、そこからアウトプットされる情報に遅れを感じる人はまずいない。なぜなら、やりとりする情報量が圧倒的に少ないからだ。一方の製造現場は、情報量が多種多様かつ膨大でありながら、1分1秒を争う世界。データをクラウドにあげていては、間に合わないのである。

「AI=クラウドへ搭載するもの、というイメージが先行している中、『クラウドじゃないの?』と何度も言われました。でもクラウドにはクラウドの、装置層には装置層の良さがある。その価値を理解してもらうのに、非常に時間がかかりました。また、現場の人間が簡単に扱えるということも求められました。ハードルは非常に高かったですね」(鶴田)

写真左から、見置 孝昌、川ノ上 真輔、鶴田 浩輔、笠井 貴光写真左から、見置 孝昌、川ノ上 真輔、鶴田 浩輔、笠井 貴光

オムロンへの期待と信頼が、メンバーの思いを支える

そもそも前例がない商品である。方向性を決めた後でも「センサー屋のオムロンにそんなことができるのか」「AIが搭載されたコントローラーを現場の人間が使いこなすことができるのか」といった反対意見が各所から噴出した。一緒にプロジェクトに関わった顧客であり、共創先でもあるメンバーからも同様の声が上がったそうだ。
「だから逆に聞きました。『そんなに反対するのに、なぜ一緒にやろうとしてくれるんですか?』と。」(笠井)


その問いかけに対する返答は「オムロンみたいに現場に寄り添って最後までやろうとする企業は他にないから。」
技術や知見もそうだが、そこには愚直にそして誠実にお客様と向き合うことで蓄積してきた、オムロンへの期待と信頼があった。


「AIやIoTというキャッチーな言葉に踊らされては意味がない。本当に価値のあるものでなければ。」(笠井)


笠井をはじめとするメンバーは現場にとってより良いものを提供するためには、共創先のエンジニアたちとの共感を深めることが必要と考え、1週間に2、3度のブレストを、なんと数か月もの間、繰り返した。
やがて笠井たちの熱意が共創先にも伝わったのか、「検証現場はいくらでも準備します。一緒にチャレンジしましょう」という話がいただけるようにまでなったのである。関係各所がひとつになり、前例のないチャレンジに向けて一気に邁進しだしたのだ。

「もうひとつ転機があるとすれば、包装機の実機を検証用に導入したこと。このおかげで開発の速度が格段に上がりました。やっては直しの繰り返しでしたが、気が付けば大手メーカーが抱えていた課題をこの包装機を使って実証した技術で解決できるなど、目に見えて成果が表れてきたのです。」(見置)

現場知能化を実現するAI搭載マシンオートメーションコントローラー

現場知能化を実現するAI搭載マシンオートメーションコントローラー

オムロンのものづくりが目指す未来

ゼロスタート、業界初。笠井たちはこんなふうにも話す。
「一番大切なのは、私たちのものづくりとは何を目指しているのか、ということ。ものづくりが衰退したら世界中の人々の暮らしが衰退する。だから私たちは人々の暮らしを豊かにするためのものを作っているのです。目的は世界一のものを作ることではなく、その先の未来をイメージし、ソーシャルニーズを創造していくことなのです。」(笠井)


共創先と手を取り合い、社内の知見を結集させ、足りないものは社外からも補う。文字にすると簡単だが、その根底には、「このプロジェクトを絶対に成し遂げる」という揺るぎない思いがあった。AI搭載マシンオートメーションコントローラーは、これからも更に進化を遂げ、製造業界に新たな価値を生み出し続けていく。

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