赤ちゃんからお年寄りまで誰もが安心して利用できる駅を目指して

センシング技術を活用した、西武鉄道との取り組み事例

日常の通勤や買い物、休日の旅行など、私たちが生活する中で列車は無くてはならない存在だ。

日本へ旅行に訪れる外国人観光客も年々増加する中、ホームからの転落など駅で起こる事故を防ぐため、鉄道会社各社は安全性の向上に日々取り組んでいる。

日本屈指の私鉄企業として100年を超える歴史を持つ西武鉄道株式会社は、「「安全」を基本にすべての事業・サービスを推進します。」とグループビジョンに掲げており、ホームドアや足元注意喚起灯といったお客様の安全を守る設備・システムの導入を進めている。
そしてこの度、西武鉄道は新たな試みとしてオムロン ソーシアルソリューションズとタッグを組み、列車の乗降時における車両とホームの隙間による事故を防止するプロジェクトを立ち上げた。
最先端のセンシング技術でお客様の安全を守るべく立ち上がった西武鉄道とオムロン ソーシアルソリューションズのメンバーと、実証試験をスタートさせた西武新宿線の新井薬師前駅を追った。

初めての試みであるホームと地上の間を検知するシステム

「これまでも駅での安全対策や注意喚起など行ってきましたが、転落事故はなかなか減少しませんでした。どうしたら転落による事故を未然に防ぐことができるのか。オムロン ソーシアルソリューションズさんにお話をいただいたのはちょうどその頃でした。」
西武鉄道安全推進部の木村聡氏は、プロジェクトの誕生を振り返った。

従来の転落事故の防止は、ホームドアを設置して落下する前に防止するか、落下後に転落マットで検知するかの2択だった。しかしホームドアを設置した場合でも、開いた後に車両とホームの間に距離があれば隙間に挟まってしまうケースも考えられる。また転落検知マットも落下後の救出を目的としており、車両とホームの隙間に挟まって、ホーム下まで落ちていない状態を検知する事は難しい。
そこで、ホーム下への落下後だけでなく、車両とホームの隙間に挟まっている状態を検知し、駅ホームに設置された警告灯を表示させる今回のシステムの検討を開始した。
過去に例のない初めての試みだった。

178_01.jpg西武鉄道株式会社 安全推進部 木村聡氏

コア技術「センシング&コントロール+Think」を応用した技術開発

これまでの検知システムはカメラの画像認識を利用することが多かったが、課題もあった。
カメラでは、鳩や猫などが少しでも検知範囲(カメラの画角)に入ると誤検知してしまうなど、精度面から実用的でないことが多かったのだ。
そこでオムロン ソーシアルソリューションズが提案したのは、意外にもシンプルなレーザーセンサーによる検知だった。オムロンにはレーザーセンサーの豊富なノウハウがあり、また精度もカメラの画像認識より高かった。

「2ヶ月かけて試行実験を繰り返し、センサーにより情報を入手しデータを蓄積しました。蓄積したデータをもとに、最適なアルゴリズムを作り出せたことが一番のポイントです。その精度は極めて高く、車両の年代や型番、そして各駅停車と急行の違いまでも判別できるようになりました。」
と話すのは、プロジェクトを主導したオムロン ソーシアルソリューションズの馬場、杉立、高田の3名だ。

178_02.jpgホーム下にセンサーを2台設置し、異なる高さから水平にレーザーを照射(イメージ)

センサーにより入手した情報を正確かつ高精度に処理する決め手は、オムロンのコア技術である「センシング&コントロール+Think」だ。
「センシング&コントロール+Think」技術を応用することで、センサーにより入手(センシング)した情報から今ホームでどのような事象が起きているか判断(Think)し、ホームにあらゆるパターンの警告を適切かつ迅速に表示させる(コントロール)ことに成功した。

「オムロンが持つセンシング技術を駅の安心安全に活かせないか、と以前から考えていました。今回のプロジェクトで実現し、西武鉄道様のお役に立てたのは嬉しかったです。」
まさに3人の願いが叶った瞬間だった。

178_03a.jpg

オムロン ソーシアルソリューションズ 高田義教、馬場基至、杉立好正(写真左から)

システムの導入により、沿線の住民の暮らしも変化

今回、新井薬師前駅が実証試験の対象となった背景は、その構造にある。駅のホームが構造上カーブを描いているため、直方体である車両との間にどうしても大きな隙間ができてしまう。
「新井薬師前駅で園児を乗せる時は、必ず抱きかかえていました。車両とホームの間に距離があるので、落ちないか不安でしたので。でも彼らもいつかは自分で列車に乗れるようにならなければいけません。安全対策が導入されると聞いて安心しました。」と話すのは、地元の保育士の田中さん。

ホーム隙間転落検知システムの導入は、沿線に住み働く人々にも安心感を与えている。

178_04.jpg西武新宿線 新井薬師前駅のホーム

更に、車両とホームの間に隙間がある駅だけがこのシステムの対象ではない。ホームドアの重量に耐えられず設置できない駅、ホームドアの導入が予算的に難しい駅などもある。これらの駅でも今後、この隙間転落検知システムを導入できる可能性がある。導入コスト、ランニングコスト共に従来のホームドアよりも非常に安価であるこのシステムは、様々なニーズに対応することが可能だ。
「このシステムは新井薬師前駅だけでなく、西武鉄道の他の駅にも拡大する事を検討しています。今後はホームドアの設置と隙間転落検知システムの両方を併用して、お客様のため、より一層の安全向上を図っていきます。」と、木村氏は今後の展望を熱く語ってくれた。

お客様に安全に、安心して列車を利用していただきたいという思いからスタートした本プロジェクトはまだ始まったばかり。西武鉄道とオムロン ソーシアルソリューションズのチャレンジは続く。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

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