社員はFAMILIA(ファミリア)

離職率を下げるための人事イノベーションの鍵はエモーショナルサラリー

メキシコが自動車生産拠点として注目されている。低い労働コストそして北米市場へ短時間でアクセスできる地理的優位性を求めて、世界中の大手自動車メーカーがメキシコでの生産体制を拡大し続けている。2017年、メキシコは中国、米国、日本、ドイツ、インド、韓国に次ぐ世界で7番目の自動車生産国となった。

成長する産業で、欠かせないのが有用な人財の採用。現地では自動車メーカー・部品メーカー各社こぞって技術系エンジニアを中心とした採用活動を進め、メキシコの人財市場は買い手市場となり、毎月の離職率が平均10%近い。そのような環境下において、平均5%以下という離職率のオムロンメキシコ工場人事部の挑戦を追った。

10ペソの昇給よりも企業理念の共有

メキシコでの離職率の高さは以前からの課題であり、オムロンメキシコ人事部でも様々な戦略や取り組みが行われていたが、大きな成果は得られていなかった。

人事部のアドリアナらにとって変化のきっかけは、オムロングループ会長立石文雄と直接対話する機会だった。オムロンでは会長と社員が企業理念について共有する場が世界中の国で定期的に開催されており、どのように企業理念を実践するか、グループ一体となって力を入れている。

「遠方からメキシコまで来ていただき、直接話を聞くことができました。リスペクトのある接し方で立石会長がこれまでやってきた仕事、懸命に取り組んできた企業理念の実践について丁寧に話してくれました。話を聞いていく中で、オムロンは企業理念の実践、そして働いている人財によって支えられていると改めて気づき、私たちは、企業理念の1つである「人間性の尊重」を軸とした新たなアプローチで離職率低減の取り組みを開始しました。」

会長との対話をきっかけとして、「人間性の尊重」に重点をおいた人財戦略を組み立てたアドリアナたちは、人財の流出防止のために大きく2つの施策に取り組み始めた。
一つは、オムロンの軸となる企業理念の共有。そしてもう一つは、スキル研修等の入社時のトレーニングや、社員への家族イベントをはじめとした、人財のテイクケアだ。
「10ペソ上げるよりも、まず彼らのテイクケアすることが重要だと思っている。賃金・給与アップなどではなく、他の会社が提供できていない価値を提供したかった。それは自分たち特有の企業風土や企業理念に他ならない。」とアドリアナらは強く語る。

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人事改革の立役者となったアドリアナ(左)とクリジア(右)

社員は新しいファミリーの一員

新しく入社した人は、新しいファミリーとして迎え入れる。それが、アドリアナとクリジアが新しく掲げた方針だ。

入社後、社内をみんなで一緒に歩くツアーを組んだり、州外から入社した人には少しでも気持ちよいスタートをきれるようにと、ホテルを手配し直筆の手紙で迎え入れるというから驚きである。彼女らの言うテイクケアは、小さな努力と気遣い。そして相手の気持ちを汲み取ること。そうしたことの徹底が、離職率低下につながっている。

175_02.jpg オムロンの企業理念に感銘を受けた、入社2週間目の金型エンジニア、ダニエル・ゴンザレス

オムロンの企業理念の実践は入社して2週間に満たない社員、ダニエル・ゴンザレス氏、金型エンジニアにも伝わっていた。
「多くの企業は企業理念が毎日の活動につながっていません。しかしオムロンは違いました。1日目のレセプションから、企業理念をしっかり伝えていただき、またその実践が様々な部門の毎日の活動に行き届いているところが感じられました。」
研修では、顧客製品(フォード・GM)の技術研修だけでなく、オムロンの企業理念そのものや風土・歴史についても時間をかけて学ぶ機会を得られる。これらすべての研修プログラムが、オムロンの企業理念と密接につながっており、大きく感銘をうけた。

175_03.jpgオムロンの制度を利用しながら仕事と家庭との両立を実現する労務部のカリーナ・エルナンデス

2016年10月から労務部(採用)で勤務し、1児の親でもあるカリーナ・エルナンデスは、オムロンの制度は家族も考慮したサポートだと話す。
「残業管理(自分で時間管理ができる)や仕事の持ち帰り制度がとても助けになっています。家族が会社に満足しているのであれば、従業員も満足します。メキシコ人にとって家族はとても大切です。」
1年間の中で数回、人事が主導となって家族が参加できるイベントを開催しはじめた。ここでは社員の子供と直接ふれる機会を設け、一緒に絵を描いたり、学校で使うノートや色鉛筆をプレゼントすることもあるという。家族の声に耳を傾けることで、より親身なテイクケアが可能になるというわけだ。

175_04.jpg年間で数回開催される、オムロン家族参加型イベント

社会奉仕活動で地域へも貢献

企業理念の実践を浸透する一環として、事業活動以外に、社会奉仕活動にも力を入れている。

175_05.jpgボランティア活動にも積極的に取り組む、勤続5年のホセ氏ー現場改善部門

「植林や貧しい宿舎へのペインティング(外壁塗装)活動、そして献血。入社してからたくさんの奉仕活動に参加することができました。困った人を助けることに誇りを感じています。メキシコ企業ではあまり例のない活動です。日本企業特有のものだと思います。」

そう語るのは勤務5年目、オペレーターとして製造現場の改善に従事するホセ氏(31歳)だ。OMRON WEEKと呼ばれる社会奉仕活動強化週間では、貧困層や障害者の支援を始めとして、リサイクル、動物愛護など多岐にわたる社会奉仕活動にチーム全体で参加する。こうした社会奉仕活動は部署ごとにチームで行い、部署対抗のテーマで競争しあうこともあるという。そしてそれが自然で無理のない人間関係と協力意識を高めるチームビルディングを生んでいる。

「目標を立てて達成すること、そして良いチームに恵まれている。人事がよくサポートしてくれているので、この会社で長く勤められたらいいなと思っています。オムロンの利益は自分の利益です。」 ホセ氏は続ける。

175_06.jpgペットボトルのキャップをリサイクルし、寄付することで病院に車いすを提供できるボランティア活動を部門ごとで競争

オムロンで働くことを通して喜びや、やりがいを実感してほしい

英語圏にはエモーショナルサラリーという言葉がある。実際のサラリー(=給与)のことではなく、仕事に対する満足度を給与の代わりに与えることを意味する。インタビュー中何度もアドリアナとクリジアから聞かれた言葉だ。

「仮に離職したとしても、オムロンで働いていてよかったと言ってもらいたい。そんな気持ちになれるように、私たちは仕事をしています」。

「人間性の尊重」を軸に様々な取組み実践してきたアドリアナとクリジア、彼女たちの人事イノベーションはまだ続く。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

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