「経営」と「現場」がタッグを組んだリスクマネジメントで、真のグローバル企業として公正で透明性の高い企業を目指す

約200名のリスクマネージャーによるグローバル体制構築と実直な運営

情報漏えいやリコールなど、すべての企業において「リスク」は常に他人事ではない。その原因は、シンプルな人的エラー以上に、急激な社会状況の変化や事業のグローバル化に対して、企業内の体制整備が追いついていないことが大きい。

世界各国に事業拠点を持つオムロンでは、2020年までの中長期経営戦略「Value Generation 2020 (略称:VG2020)」を2011年度に策定した。この中で、リスクマネジメントを重要な経営課題の一つとして、経営目標を設定し、真摯に対応してきた。
そこには、当時、経営陣が持っていた強い想いがあったからだ。

「経営・事業を取り巻く環境変化のスピードが上がり、不確実性が高くなっている中で、リスクに備え、素早く対応するため、リスクの感度を上げて、リスクの芽のうちにそれを察知し、手を打っておく必要がある」
「強い企業になるためには、成長力・収益力とともに"変化対応力"が必須である」
オムロンでは、このような変化対応力を実践するグローバルな体制を構築し、200名近いリスクマネジメント担当者が、密に連結しながら活動を行っている。そこには、全員の「環境変化から生じる、現場の手に負えない問題も、チャレンジする現場と経営が力を合わせ解決していこう」という強い使命感がある。
今回は代表して、5名にお話しを聞いた。

国や地域によって異なるリスクを把握する

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(グローバルリスクマネジメント・法務本部 リスクマネジメント部長 田邉 慶周)

企業が抱えるリスクは多岐にわたる。しかも、国や地域によって法律や文化、常識などが異なる。グローバルに事業展開をする企業にとっては、自国では想定できないようなリスクもあり、それが顕在化してしまうこともある。それらを完全に予見し防ぎ切るのは至難の業だ。

では、どうしたか--。

たとえば、カルテルや贈賄の防止、情報セキュリティの徹底は、グローバル企業にとっては不可欠である。しかし、地域や国の事情も違う中で、研修の進め方も異なってくる。日本発の発想で研修を考えてもうまくいかなかった。そこで、VG2020がスタートした2011年、異なる地域のメンバーが一同に会して決めていこうではないかと考え、「GLH」(グローバルリーガルヘッドクォーター)というバーチャルな組織を立ち上げた。各地域統括会社のリスクマネジメントの代表者が四半期ごとに顔を合わせてミーティングを行うようにしたことで、リスクマネジメントに関わるグローバルな施策を日本発でなく、すべての地域の事情に合った施策をグローバル起点で迅速に決めていけるようになったのだ。
さらに、グループ会社ごとにリスクマネージャーを選任。各地域統括会社と連結して、事業の最前線である現場にリスクマネジメントを浸透していくのを狙った。

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(アジアパシフィック本社担当:大野 浩重)

このような本部主体の動きは、その後各エリア内での活動にも繋がってくる。
例えば、アジアパシフィック本社では、本社拠点のあるシンガポールのみならず、エリア内の各国にてリスクマネジメント会議を開催しているという。

大野は語る。
「私が担当するエリアは、インドやオーストラリア、ニュージーランドなど11か国にも渡ります。それぞれの国によって文化、宗教、政治、自然環境、法律等様々に異なるので、想定されるリスクも違ってきて当たり前です。このような特性を踏まえて、11ヵ国ごとにそれぞれ個別にリスクマネージャー会議を開催しています。国ごとの会議を通じ、そのエリアの文化や空気感を知れ、また各国特有の問題についてリスクマネージャーの方々と議論を深めることができます。加えて、やはり人間同士ですから、こちらから現場に足を運ばせていただくことで信頼関係が醸成される面もあると思います。コストはかかりますが、継続していきたいですね」

このように、本部主体の動きは各エリアでの活動にもつながり、今では月・週単位でリスクマネジメント会議を開催するエリアまで出てきている。

ベストプラクティスは現場から生まれる

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(米州本社担当:Blake Thatcher)

このアジアパシフィックでの取り組みに見られるように、オムロンのリスクマネジメント最大の特徴は「現場」にある。
オムロン全社が掲げる共通理解のもと、現場目線で発見したリスクには、そのエリアで素早く対処していくのが最善と考えているのだ。

こういった活動を通して、グローバルで展開できるベストプラクティスは現場から生まれている。

リスクマネジメントについての理解を広めるため、米州エリアではeラーニングを先行して取り組んできた。北米だけでなく中南米までカバーする米州地域本社ならではの取り組みだ。
この活動は、すぐに欧州地域本社も取り入れた。このような現場から生まれた活動がすぐにエリアを超えて横展開されるケースが珍しくない。
これも、毎四半期ごとに、顔を合わせてグローバルのリスクマネジメント施策を意思決定している賜物だ。

現場独自の活動は他にもある。
米州エリアでは、各グループ会社の取締役会直属の、「ガバナンスボード」という会議体を設けた。そこには、地域統括会社のリスクマネジメント責任者も入り、各社の経営層とリスクマネジメントについての議論を四半期又は半期ごとに重ねている。この取り組みでは、本社から提示されているリスクアセスメントを地域統括会社のメンバーが検証したり、リスクをスコアボード化することで、取り組むべき経営課題を具体化し、それを経営陣に提示している。それにより、ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスに対する経営層の責任や重要性への認識をより高め、従来よりも高いレベルでの議論の実現に繋がっています。

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(欧州本社担当:Patrick Duregger)

また、欧州本社のDureggerは、
「コンプライアンスやガバナンス観点からのリスクと事業観点からのリスクでは管理に必要なスキルが異なるため、そこを分けて運用しています。管理部門の社員をコンプライアンスマネージャーとして任命し、事業や活動をより理解している営業部門の社員を事業リスクマネージャーとして任命しています。同時に、すべての業務を本社側で行えないという問題もありました。私の担当するエリアは広大で、多くの国家や組織が存在するため、「現場」の人間が必要だったのです。そこで、社員に主要な業務とは別に、リスクマネジメント業務も担当してもらいました。日々の業務に新たな業務が加わることは当初、あまり好まれませんでしたが、トレーニングを行い業務や経営側の期待を伝え、自国および社内会社・関係会社のリスクを認識してもらったことで、状況は改善しました。また、人事と連携してリスクマネジメントの項目を経営陣から現場の社員までの人事評価に追加したことも、意識としてより深く浸透するきっかけにもなっています」
と実感しています。

昨年2017年1月に設立したばかりの韓国地域統括会社は、好調な半導体関連事業を受けて急増する人員とオペレーションに起因するリスクに対し、他の地域の活動を参考に取り組みを強化している最中だ。
「急激な事業成長を遂げるエリアだからこそ、より感度を上げて、現場と本社が一体となって、早期にリスクを察知し、適切に手を打つ『リスクマネジメント活動の強化』が必要と思います」
担当の荻野は、熱い気持ちを語ってくれました。

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(韓国本社担当:荻野 竜一)

このような愚直なまでの取り組みは、具体的な成果としても現れてきています。
中国本社では、1ヶ月に1,000件以上のリスクの芽が27の事業現場から報告されてきます。
日々のリスクマネジメントに関しての浸透活動は、ややもすると疎まれることもありましたが、最終的には会社が自分達自身を守ってもらえるという信頼感が高まり、どんな可能性であれ早めにリスクの芽は報告するという社員意識の向上が生み出した結果でしょう。

現場と経営が一緒になって、現場では解決できないリスクを解決していく

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https://www.omron.co.jp/ir/irlib/pdfs/esg/20171227_esg_grl.pdf

先ほど、「オムロンのリスクマネジメント最大の特徴は『現場』にある」と書いた。とはいえ、現場だけでは対処できないリスクも存在する。
重要視しているのは、本社・各地域統括会社・各グループ会社のリスクマネジメントに対しての連携だ。

年に数回、取締役や執行役員も参加する会議体を通してPDCAサイクルを実施し、意識の深化には余念がない。
また、グローバル共通のルールに基づきエリアごとの統合リスクマネジメントルールを作成したり、25か国語対応の「倫理行動ルール」を教育したりするなど、現場だけではなく経営陣も巻き込んだ浸透活動を徹底している。

しかし、M&Aやオープンイノベーションが活発な現代においては、新しい試みを始める際には必ず未知なるリスクが浮き彫りになる。リスクをリスクと捉えられていれば良い方で、そもそも何がリスクなのかわからない場合もある。残念ながら、良かれと思って現場で判断したことが問題となることも現実には起きている。

だからこそ、現場に任せつつも、いざとなれば経営が動き、一緒になってリスクを解決していく姿が理想なのだ。グローバルリスクマネジメント・法務本部は「私たちは、経営と現場をつなぐ架け橋になりたい」と力を込める。

リスクへの感度を上げ、リスクの芽を見つけたら速やかに手を打つ。

オムロンは、企業に課せられた社会的責任を全うすべく、これからも経営と現場が一体となりリスクに手を打っていきます。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

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