5,300万人の乳幼児と、その家族に安らぎの夜を

赤ちゃんの快眠を支える、世界初2-in-1マルチ機能付家庭用医療機器DuoBabyの誕生秘話

赤ちゃんが泣き止まず、眠れなかった夜はないだろうか。その理由が、空腹や寂しさではなく、もし病気を患っていたとしたら--。

風邪を含む呼吸器感染症は、世界中の子どものうち年間5,300万人が患う非常に一般的な病気の一つだ。呼吸器感染症によって鼻詰まりを起こすと鼻から呼吸することができないため、赤ちゃんにとっては泣くことが十分な酸素を得る唯一の方法となる。こうした赤ちゃんの夜泣きは赤ちゃん自身の生活リズムの崩れと発達への支障をもたらすだけでなく、家族全体の生活の質にも影響する-世界の家族に共通する深刻な課題と言える。

イタリアやロシアなど、ヨーロッパでは、鼻づまりなどの緩和に、アスピレーターで鼻汁を吸引し、ネブライザで喉を潤し鼻の通りをよくするという使い方をする。特に赤ちゃんは自分で鼻をかむことができないので、通常アスピレーター(鼻汁吸引器)とネブライザー(吸入器・噴霧器)を組み合わせて使うのが一般的だ。しかし、衛生面や利便性、有効性、費用面において多くの課題が残されていた。この課題を解決すべく、開発に着手したのがオムロンヘルスケアのエンジニア。そこから、革新的でユニークなアスピレーターを備えた、世界で初めての2-in-1マルチ気道ネブライザー、「DuoBaby」が誕生した。

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DuoBaby

母親としての実体験を反映したプロジェクト

DuoBabyプロジェクトをリードしたのは、オムロンヘルスケアヨーロッパ(ヨーロッパ、中東、アフリカ地域)のマーケティングディレクターで、二児の母でもあるルシア・プラダ(伊)。彼女は自らの経験を通じて、ユーザーに近い立場から新生児呼吸器感染症の問題に注目し、自らの化学工学の豊富な研究実績を活かしてプロジェクトをリードした。彼女がこのプロジェクトに関わったのは二人目の子どもの妊娠中の出来事だった。

「私の一人目の娘は、鼻水や鼻詰まりを頻繁に起こしていました。泣く我が子をなんとか楽にしてあげたいと、子どもを一人で抱えながら、手動式アスピレーターで子どもの鼻と自分の口をチューブでつなぐ。真夜中に、難しい姿勢の中試行錯誤するも、娘は泣き続けて。私は一人の親として、そして研究者として、この課題を解決しなければならないと思いました。」とプラダは語る。

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Lucia Prada

この課題に取り組むにあたり、プラダは自分の子どもと同じ課題がどれだけあるのかを探るため、ヨーロッパ各地を回り、子どもを育てる母親や医師たちに対して聞き込みインタビューを行った。鼻詰まりで一晩中泣く赤ちゃんの苦しみと、どうすることもできずただただ見守る親の苦しみ。二重の苦しみに加え、従来のアスピレーターやネブライザーの課題をユーザーの立場からヒアリングしたのである。医師へのインタビューでは、小児科医を鼻づまりで受診する子供の一番の原因は、鼻の衛生状態が悪く、家庭におけるケアの効果が低く、上気道および下気道の合併症を引き起こしたためだと判明した。つまり、鼻腔を衛生的に保つことができれば、感染症や合併症を防ぐことができたケースが多かったのだ。

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従来のアスピレーター(左)とネブライザー(右)

熱心な研究、テスト、チームの献身により製品が誕生

課題とマーケットのニーズは理解していたものの、プラダのチームにはアスピレーターを研究開発するための内部リソースが不足していた。開発はもちろん、テスト、生産まで行う能力を持つ企業とパートナーシップを組む必要性があったのである。プラダは、マルチ気道噴霧器「A3コンプリート」をオムロンヘルスケアヨーロッパと共同開発したイタリアの3A社に共同開発を依頼することにした。

プラダは次のように述べている。「人々のより良い生活につながるような製品を作りたい。その想いから、内部でできることのみに縛られず、3A社に相談を持ち掛けました。オープンイノベーションにより、アイディアを現実化することができると考えたのです」。

プロジェクトのスタート当初、チームは吸入器から空気を吸引し、単一の装置で噴霧器を通して空気を押し出す仕組みをいろいろと試してみた。しかし、吸入器から流入する空気が装置を汚す危険性があったため、他の可能性を模索しなければならず、ゼロベースから議論を重ねなければならなかった。

議論の中でエンジニアたちは、内部の通気システム(以後ベンチュリ)を介して、装置に空気を入れずに鼻汁を吸引するというシンプルで独創的な仕組みを思いついた。これを使用すると、感染源となるものすべてが回収チャンバー(Suction Chamber)に入り、アスピレーターからの空気は決して吸気口や排気口に接触することはない。このシンプルかつ革新的なコンセプトは一石三鳥となり、衛生面、有効性、コスト面の課題まで解決することができた。プラダがこのコンセプトを前述の医師たちに説明すると、彼らは皆、この装置が呼吸器閉塞の除去や合併症の予防に有効であることに同意した。

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ベンチュリイメージ図

残る唯一の懸案は、安全面。プラダは、「アスピレーターの吸引力は、鼻汁を除去するのに十分な強さで、なおかつ、赤ちゃんの繊細な肌に優しくなければなりませんでした」と言う。チームは市場に出回っている安全認証済みの装置に、鼻汁に見立てた異なる粘性の液体を通して吸引力を測定し、検証を行った。その結果、最適な装置を見つけ出すことに成功した。

熱心な研究、臨床実験、テストを通じて、ついにDuoBabyが誕生したのだ。

臨床実験を繰り返しながら、家庭でのユーザビリティーも向上

DuoBabyは、鼻を衛生的に保つことで感染のリスクを低減することが臨床的に証明されている、革新的でユニークな家庭用医療機器だ。加えて、B2C(コンシューマー)事業として成立するための、安全性、操作性、利便性、低コストを兼ね備えている。

DuoBabyを愛用する人の多くは、DuoBabyが従来のアスピレーターよりもはるかに使いやすくて衛生的であると語る。今までは、子どもを抱きながらチューブを子どもの鼻に入れて、もう一方を自分の口に入れていたのが、DuoBabyなら子どもを片手で抱え、もう片方の手でアスピレーターを使うことができるためである。

また愛用者からは、その高い機能性や利便性について以下のようにコメントも寄せられている。
「これまでのアスピレーターでは、きちんと吸引されているかが分かりませんでした。しかしDuoBabyは吸引物がクリアケースの中に溜まるのが目で確認できるので安心です。」
「従来のアスピレーターは、消耗品の交換にも費用がかかりましたが、DuoBabyは消耗品を再購入する必要がなく、必要な時に必要なだけ使えるので素晴らしいです。」

DuoBabyは小児科医や親から大きな支持を受ける製品となった。2016年の誕生以来、売上高は倍増する勢いだ。これからは、ヨーロッパ地域への販売拡大を進めていく。

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家族の生活の質を向上し、この世界をより良い場所に

163_07.jpgどの親も、子どもを含む家族が健康で幸せな生活を送れることを願う。プラダは母親として、自分が育児をする上で遭遇した経験をもとに、家族が生活の質を向上させ、ひいてはこの世界をより良い場所にするための製品を世に送り出すことに成功した。

プラダは最後にこう述べた。
「第一歩は外部との接点。人々にアプローチすることで消費者のニーズと動向を汲み取ることができ、企業にアプローチすることで自社の限界を超えた魅力的な製品を作り出すことができる。世界中の赤ちゃんや親にDuoBabyの恩恵や生活の質の向上を経験してもらいたい。」

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