急増する世界中の生活習慣病患者を救え! ~国・地域と進める、自分を知る"測る"習慣~

フィリピン政府と提携して進む地域の健康プログラム

「人口世界第12位、1億100万人のフィリピン人の死因トップが心臓病だという事実、知っていますか?」
問いかけるのは、オムロンヘルスケア フィリピン営業所のジャニス・イアン。

136-008.png「驚くべきことに、フィリピン人の成人中28%が高血圧を患っていることがその要因なんです。しかし、高血圧を患っている1900万人のフィリピン人の中で、血圧計を持っているのはたったの3%、それが現実でした。」

食生活の欧米化を背景に、生活習慣病患者が急増しているフィリピン。
生活習慣病の改善には、まずは自身が身体の状態を把握すること、その上で生活習慣を改善していくことが不可欠。

「フィリピンでは、病気の危険性やその危険を回避するためにやるべきことへの情報が乏しく、病気に対する人々の認識が低い状態にありました。家庭に血圧計が無いために、自分の血圧を正しく認識することもできません。その理由は、国民の74%が下層階級とされその21%が貧困家庭という現実。個人で高価な血圧計を手に入れるのは非常に困難でした。」
そう、2014年当時を振り返ります。

フィリピンが直面しているこうした社会的課題解決を支援するため、ジャニス・イアンのチームはフィリピン政府と提携。
2014年、地域社会に向けた健康プログラム「バランガイ健康プログラム」を開始しました。

バランガイとは、日本でいう、村、地区または区を表す言葉。
フィリピンでは、人々は各バランガイに所属し、健康診断や歯科検診、ワクチン接種などの際は、病院ではなく所属するバランガイの保健施設で受診しています。

フィリピン政府の協力のもと、3か月で300のバランガイの保健施設において、無料で血圧や血糖値を検査。
血圧測定の特別な知識や技術がなくても、誰でも簡単に測定できるデジタル式の血圧計を用い、医療従事者と地域社会に対して健康管理の重要性を広める活動を続けました。

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国民の健康を守る政府のパートナーへ

このプログラム立ち上げから5か月後、フィリピンの保健省は、44,000カ所のバランガイの保健施設に126,000台のデジタル式の血圧計を設置するというプロジェクトを立ち上げます。

「これは、フィリピンにとって画期的な転換点でした」ジャニス・イアンは振り返る。

政府が国民自らの健康管理の重要性を認識し、政府主導で国民の健康のために動いた瞬間でした。

この政府の動きは、まさに国民の健康を願うジャニス・イアンのチームが期待していたこと。 フィリピン政府のタイトで難易度の高いニーズにも、ものづくりのプロセスを変更し、従来の半分以下の時間でオムロンヘルスケア ベトナム工場がやりきりました。

結果、1年の間に血圧計の普及率は35%まで達することができました。

そう、できないことはない。

「バランガイ健康プロジェクトに情熱をかけた理由・・・
社会への真の貢献を目指したいというのが全ての始まりでした。
国内の遠隔地や最貧層にまで、健康の意識が届き、全国民の健康増進に役立つだろうと言えることを、幸せかつ誇らしく思います。
そして、何より、そのために、国境と組織を越えた私たちのチームがソーシャルニーズの創造を目指して示したチームワークと自分自身への挑戦を誇らしく思います。」と、ジャニス・イアンは目を輝かせて語ります。

地域に根差した取組みで、インドの社会課題を解決する

健康を脅かす生活習慣病の問題は、今や先進国だけのものではない。

ITを中心に著しい経済発展を遂げ、個人消費が拡大するインドも、フィリピンと同様に、生活スタイルの欧米化から、高血圧や肥満、糖尿病といった生活習慣病患者が急増しています。

インドの貧富の差は激しく、特に都市部を除いた地域では、人々の健康意識の低さから、健康・医療機器を家庭で保有する人は少ない。
血圧などの身体情報を計測するには、多くの人が病院まで行き、自費負担をしなければならないのが実情。医療機関の数も圧倒的に不足しています。

病院では、有害物質として世界的に利用停止が叫ばれている昔ながらの水銀を使用した血圧計を未だに使用しているところも多く、取扱いに注意が必要なだけでなく、血圧測定には専門の知識と技術が必要です。そのため、医師または資格等級の高い一部の看護師しか扱えないといった問題もあります。

オムロンヘルスケアインドでは、医師に対しては、電子血圧計の正しい知識と測定方法を伝え、家庭での定期的な血圧測定が重大な疾病の予防に繋がることを、患者さんに分かりやすく伝えてもらうためのアドバイスや、医学の専門家によるセミナーを開催しています。

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医療の専門家によるセミナーを開催

特別な知識や技術がなくても、短時間で誰でも血圧測定できる電子血圧計を導入した病院では、診察の待ち時間を利用して看護師が血圧測定を済ませられるようになり、診察時間が短縮。医療機関不足によって診療を受けられない人が増加しているという社会課題の解決に繋がると期待が寄せられています。

また、一般の方々に対しては、主要都市の公園や商店街、時にはリクエストを受けた企業のオフィスで、血圧や肥満度を表すBMIの無料測定会を実施。
家庭での健康管理の重要性を普及するとともに、生活習慣病の予防や改善への基礎的な知識の普及を図っています。

医療機関が不足している地域では、こうした機会を利用して自身の健康状態を把握しようと、100人以上の行列ができることも珍しくありません。

オムロンは地域社会に密着し、人々の健康のためにできることは何か?を日々考えています。

「健康で長生きし続けたい」という思いは、時代や地域を問わず変わることのない人々の願い。

そのために、自分の身体の状態を毎日客観的に把握して、健康でいるためのアクションを取り続けることが大切です。

私たちにできることはまだまだたくさんある。

世界中の人々が健康になるまで・・・オムロンの挑戦はこれからも続きます。