【第3回】AI(人工知能)を使えば、人と機械は互いに成長できる(全3回) フォルフェウス成長の軌跡~ラリーする卓球ロボットから、AIで人と共に成長する存在に~

「人と機械が融和する未来」を体現した最新技術として、毎年進化を重ねているフォルフェウス。
「なぜ生まれたのか?」「今年はどんな進化を遂げているのか?」その全貌が、歴代の開発リーダーの口から明らかにされる。

最終回となる今回は、CEATEC JAPAN 2016で公開された3代目フォルフェウス。
AI技術のなかでもディープラーニングを導入したフォルフェウスは、どのような進化を遂げたのか?
そして、ディープラーニングを実際に導入するうえでのポイントとは?

フォルフェウスの進化、人と機械の関係の進化は止まらない。

3代目フォルフェウスの開発リーダー 大谷 拓 に聞く
-人と機械が共に成長する未来を予見させる、3代目フォルフェウス。進化のポイントや難しさをお聞かせください。

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これまでのフォルフェウスは機械が人の能力を引き出すコーチのような存在でしたが、人と機械の融和ということを考えたときに、「人も機械もお互いに成長し合う」という未来が来るとオムロンでは考えています。

今までのフォルフェウスでは人が機械を成長させる、という技術はまだ入れていませんでしたが、今年はその点が進化です。

具体的には、ディープラーニングというAI(人工知能)技術を取り入れています。
ここ、京阪奈イノベーションセンターに卓球の上手い人や初心者の方に来ていただいて、1人3分間のラリーを体験していただきながら様々なデータを取っています。最終的には100人以上のデータを取って完成させました。

フォルフェウスに学習させていて、分かったことがあります。
それは、頭と両肩の位置が大きく動かない人は、早い球でラリーを続けることが出来ることです。
今年のフォルフェウスは、ボールのスピードだけでなく、人の表情と骨格情報の動きを見て、プレイヤーとの「融和度」を見ています。ラリーを続けながらプレイヤーが楽しみながら上達してきたら、フォルフェウスも返球のレベルをイージー/ノーマル/ハードの3段階で変えるということを自分で考えてできるようにしています。

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人の骨格情報を認識する

フォルフェウスがディープラーニングする際には、この分野の研究で著名な中部大学の山下先生からディープラーニングの秘訣をアドバイスいただいたり、オムロンが開発したAIを搭載したドライバーモニタリング技術を応用しています。

卓球をしているときに、ラリーが失敗してしまって、球が床に転がったりしている時間があるんですが、そういったデータを取り除く作業が実は一番大事なんです。
卓球をしていないときのデータもディープラーニングに入れてしまうと、間違って学習してしまいますので、そこを取り除く、本当に必要なデータだけで学習させるという作業に、実は一番手間がかかっています。

機械が考えていることが分かる、人をやる気にさせるという点も去年から引き続き進化させています。

オムロンの技術にOKAOという表情を読み取る技術があるのですが、この技術でラリー中のプレイヤーの表情を見て、笑顔が出てくると「融和度」が、だんだん上がってきたことを理解して、フォルフェウスも喜び、人がラリーを続けたくなるようにしています。
フォルフェウスの頭や体の色が変わったり、ネットに表示する融和ゲージが貯まったりするような仕掛けを入れることで、互いにやる気を引き出し合うコミュニケーションをしています。

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融和度があがるとフォルフェウスもその表情を変える

ラリーができるだけでは「融和度」は上がりません。表情から読み取れる人の気持ち、だんだんラリーがうまくなるという人の成長を見ています。

この「融和度」を人と機械であげていくという共通の目的を持つこと。
それが人と機械が互いに成長し合うとして、開発を進めています。

世界中のより多くの人に「人と機械の融和」する技術が実現しつつあり、人の可能性が今よりもっと広がるワクワクした未来が手の届くところにあるということを体験していただけることを楽しみにしています。そして、世界中のみなさんと一緒に協創して、ワクワクした未来の前にある社会課題を解決する技術開発を前進させていきたいと思っています。

フォルフェウスは、ただ卓球をするために生まれたロボットではない。
人の能力や可能性を引き出すわたしたちの未来への道筋を示す存在。
これからの10数年で人と機械の関係は大きく変わるでしょう。
フォルフェウスを、これからの人と機械の関係について、多くの人たちと一緒に考える一つの手がかりに。

わたしたち人間の未来への挑戦は終わらない。

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