一人ひとりの個性に合わせることが、全体の能力アップにつながる ~学校教育にも通じる障がい者が働く工場の人材育成~

8月、72名の東京都公立高等学校長協会の校長先生を前に講演したのは、オムロンの特例子会社、オムロン京都太陽 代表取締役社長 の宮地 功。

講演テーマは一見、学校教育の現場に直接的には関係のないように見える「障がい者雇用への取組」でした。

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東京都公立高等学校長協会と東京都教育委員会とが連携し、毎年開催しているこの人権教育に関する講演会への登壇依頼をくださったのは、東京都立府中西高等学校校長の西島 宏和先生です。

西島先生は、以前に宮地の講演を聞かれ、これは単なる障がい者雇用の話ではなく、学校教育にも通ずる人材育成の有り方を本質的に示した話と感じられたそうです。


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東京都立府中西高等学校校長 西島 宏和先生

「学校でも生徒の人数が増えて規模が大きくなるに従って、一人ひとりと向き合う肌理の細かい対応が難しくなるという問題があります。
オムロン京都太陽では、それぞれが異なる障がいがある中で、一人ひとりとしっかり向き合っている。その人に合った改善が行われている点がとても素晴らしいですね。
それを土台で支える、『自分たちの働きでより良い社会をつくろう』という理念がきちんとしていること、そういった部分に共感したのが、今回の講演依頼のきっかけでした。」
と、話されました。

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オムロン京都太陽 代表取締役社長 宮地 功

宮地は講演で、オムロン京都太陽設立の経緯や、職能的重度障がい者の雇用を創出するためのノウハウについて紹介。

「スキル」「正確性」「作業スピード」について、一人ひとりの能力を把握した上で、独自のテキストで知識の獲得や能力開発をしていること、作業工程毎に必用な能力を分析し、それぞれの障がいのレベルに合わせて人財と作業をマッチングしていること、また、人が業務に合わせるのではなく、業務を人に合わせ、その人に合った治工具・自助具を補い改善することで作業効率が図れることなど、具体的な改善例を示しながら説明しました。

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車いすでは横移動が困難なため、人が動くのではなく部品棚が動く

西島先生は、
「生徒たちがいずれ社会に出れば、障がいのある人と接する機会も増えるかもしれません。そうした時に、障がい者に対し特別な存在という見方ではなく、仲間として共に働ける姿勢を身に付けさせたい。
だからこそ、私たち自身も一人ひとりの個性を認め、向き合い、そういう中で多様性を認められる人材を育成しなければいけません。
それには、毎年毎年、何度も何度も繰り返し教育し続けていくことが大切で、女性・高齢者・性同一性障害など、様々な角度から人権教育を継続的に行っていくことが重要なのです。」
と続けます。


「企業では生産性を考える時、どうしても効率を一番に考え、一律の方法を求めてしまう。
一人ひとりに合わせた改善は、一見非効率に見えるかもしれないけれど、実は、一人ひとりの生産性が増すことで、結果として全体の生産性向上に繋がっている。」
と、宮地は言います。

「我々が理解していただきたいのは、企業が障がい者雇用に関して語ると、ボランティアという誤った解釈をされがちなことです。
でも、決してそうではなく、我々は、障がい者に対し過剰に保護するのではなく、障がい者自身が健常者と同じように働いて事業を通じて社会に貢献できることを知って欲しい。そして、その活躍の場を広げていきたい。」
と、その想いを強く語りました。


講演後、校長先生たちからは、「『改善風土の譲成』や『人の特性を生かしながら生産性を高める』という発想は、学校教育にも通ずるものだと思います。教職員が学校で働くことを誇りに感じ、意欲的に仕事に励むことができるような人材育成のアイディアを頂きました。」、「理念の意義、重要性について、改めて考えさせられました。」など、沢山の声をいただきました。


半世紀も前から続くオムロンの障害者雇用の取り組みは、こうした講演活動の広がりと共に、今、広く社会に広まりつつあります。


一人ひとりに合った人財育成と業務改善を社員全員で継続的に取り組んできたからこそ、障がい者もイキイキと活躍し、結果として黒字経営を続けている。


その積み重ねたノウハウをもって、障がい者の雇用機会拡大を図るとともに、一人ひとりの個性を生かした人材育成の有り方や業務改善のヒントを、これからも企業の枠を超えて広く社会に広めてまいります。



■9月8日 オムロン京都太陽の社員3名が、障がい者雇用関係の各賞を受賞しました。

各賞に関する情報はこちらから
https://www.omron.co.jp/press/2016/09/c0908_2.html

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