世界のものづくりをけん引する"人づくり" ~日韓のエンジニアの卵たちが挑む“制御技術教育キャンプ”~

世界の製造現場で活躍する"ものづくり人材"を育てたい

10年後、世界のものづくりの現場でリーダーとなって自ら課題を発見し、解決できるエンジニア、製造業の未来を担う世界一流のものづくり人材を育成する。

2008年からオムロンと独立行政法人国立高等専門学校機構の共同で、高等専門学校の学生を対象に「制御技術教育キャンプ」を開催しています。
全国の高専から集まった学生が、オムロンの施設内でものづくり課題に取り組むインターンシップ形式の教育プログラム。
今年は、韓国の教育機関向けセミナーから、韓国の技術系・理科系の大学の参加も募り、初めて「日韓合同インターンシップ」を開催しました。

グローバル社会において、ひとつの国の中だけでは何も完結させることはできません。
ものづくりも同じ。国籍や性別の異なる多様なエンジニアたちがそれぞれの知識・スキルを持ち寄り、チームで現場の課題を解決しながらものづくりをしています。

グローバルな製造現場ではどのような力が求められるのか。同じアジア発グローバル企業として、言葉も文化も異なるチームを組んで同じゴールを目指す体験を通じて、体感してもらいました。

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世界標準の制御システムを組み上げる課題に挑む

7日間に及ぶプログラムでは、初めて顔を合わせた学生たちが寝食を共にしながら、3、4名の日韓合同チームに分かれて課題に挑戦します。

与えられた課題は、その名も「アヒルちゃん、ふと整列したくなる」。
重さと色の異なる5羽のアヒルを識別し、重さ順に並べるとともに、その結果をタッチパネルに表示させるというもの。

軽快なタイトルとは違い、各チームは世界標準の最新のテクノロジーを搭載した、制御コントローラー、色を識別する画像センサ、位置を確認するモーションコントローラーなどを組み合わせ、アヒルを正しく整列させる最適な制御プログラムを構築した自動システムを完成させます。

普段の授業では触ったことのない機器を組み合わせて1つのシステムをつくり上げるのは、学生たちにはハードルの高い課題ですが、世界標準のプログラミングを使いこなせるようになれば、世界のどの国のエンジニアとも円滑にコミュニケーションができるようになります。

学生たちは、このプログラミング言語の国際標準規格であるIEC 61131-3を事前課題で習得し、コミュニケーションの壁ともなる言語の1つ"プログラミング言語"をクリアして臨んできます。

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チームで目標を達成するものづくり現場を疑似体験

もう一つ、このプログラムの最大の特長は、チームビルディングから目標設定、決められた時間で課題を解決するまで、現実のものづくり現場さながらの経験を積めること。

「チームで協力し、限られた時間・リソースで成果を出す。そうしたものづくり現場を疑似体験することで、学校では勉強できないたくさんのことを学べるはずです」。
そう語るのは、お客様へのテクニカルトレーニングを担当するオムロンの岸 祐一。

企業のものづくり現場では、まずリーダーを決め、その統率のもと、目標とスケジュールを明確にし、メンバーが役割を分担してチームで目標達成に挑みます。
「そこで欠かせないのが、コミュニケーションです。互いの考えを伝え合い、理解し合うことで初めて国籍や文化、価値観の異なるメンバーが目標を一つにし、難しい課題も解決することができるのです。
それを身をもって学ぶことは、これからのエンジニア人生の宝物になるはずです」。

国籍だけでなく、専門分野も年齢もバラバラのチーム。最初は戸惑っていた学生たちでしたが、時間とともに、互いに足りないスキルを補い合う関係が作られていきました。
その手ごたえを感じた学生たちから、こんな声が聞かれました。

「チームメンバーは初対面の人ばかり。最初は言葉がうまく通じず、役割分担を決めるのでさえも難しかった。
一緒のご飯を食べ、一緒に寝て、同じ時間を過ごす中で、お互いの考えを理解し合えるようになった。
韓国の大学生と仲間になれたのが一番嬉しい」

「言葉もうまく通じない中での難しいチャレンジだった。
日本のご飯を食べ日本人と触れ合う中で日本の文化にも触れることができた。
もっと勉強してまた日本にきたい」

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重ねた失敗の数だけきっと大きく成長する

「失敗こそが糧になる」と語るのは、今回の課題を作成し、キャンプの開催を主導してきた明石工業高等専門学校の上 泰准教授。
学生たちは、初めて扱う高度な制御装置に悪戦苦闘。
思うようにプログラムを構築できなかったり、駆動機械を制御できずにアヒルを何度も落としたり、苦心を重ねる毎日が続きました。

「壁にぶつかるのは当然です。それを解決するために、どんなことにも取り組んでみる。そうしたエンジニアとしての"たくましさ"を培ってほしい」。

そんな思いから、教員たちはあえて手を貸しません。
上准教授は言います。

「どうして思い通りに動かないのか、なぜここでつまずいたのか。失敗するたびに解決策を求めて試行錯誤する。そうして苦労しながら知識や技術を身につけることが大切です。
失敗から学びを得て、それを次に生かせるエンジニアが社会でも求められています」。

最終日、それぞれの成果を発表するとともに、作り上げたシステムが正確に動くか、デモンストレーションを行った各チーム。
成功したチーム、残念ながら目標を達成できなかったチーム、結果はさまざまでしたが、いずれも7日間を経て、チームとして確かな成長を遂げていました。

学生たちが、ここで学んだことを糧にさらなる成長を遂げ、そしてチャレンジをし続けてほしい。

ものづくりから社会の解題を解決する。そんなオムロンと同じ想いを持ってくれる人づくりにオムロンはこれからも取り組んでいきます。

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(左)プログラムの運営を通じて学生たちを見守ってきた オムロン 岸 祐一
(右)課題の作成など開催を主導してきた 明石工業高等専門学校 上 泰准教授

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