人と機械の関係を変える世界初の研究を、日本から生み出す

~受賞者が革新的な研究成果を講演~

まだ見ぬ未来の成果に期待を込めて

公益財団法人立石科学技術振興財団は、技術革新を人にとって真に最適なものにすることを願い、オムロンの創業者である故立石一真、元代表取締役会長の故立石孝雄が自身の持つオムロンの株式を拠出するとともにオムロン株式会社が寄付金を出して設立。
以来、エレクトロニクスおよび情報工学の分野で助成を行っています。

まだ見ぬ未来の成果に期待を込め、助成するのは若手研究者の研究が中心となり、その実績は2016年度までの累計で1,035件、助成総額は18憶1千万円に達しています。

『人間がより楽しく創造的な活動をする』ために広く世の中で役立っている研究を評価

過去に助成を受けた研究者の中から、広く社会に貢献する優れた成果をあげた研究に立石賞功績賞を、助成は受けていないものの、財団の趣意に沿った日本発の研究・技術開発で顕著な業績を残した研究に立石賞特別賞を授与しています。

第4回を数える今年度の立石賞は、東京大学大学院教授の染谷隆夫氏、京都大学名誉教授の山本 裕氏の両名が功績賞に、また日本アイ・ビー・エム株式会社IBMフェローの浅川智恵子氏が特別賞に決定。

3名の研究成果は、広く実用化の領域に及んでおり、素晴らしい成果を挙げられています。

2016年5月、2016年度助成金贈呈式と立石賞の表彰式を催し、続く受賞者3名による記念講演にてその研究成果と過程を発表し、これから研究にまい進する若手研究者を激励しました。

ロボットに皮膚感覚を持たせる技術から人の生体情報計測へ

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「『柔らかい』という特性を持つ有機エレクトロニクスは、これまで以上にヒトと機械との調和を高める可能性を秘めています」。

記念講演でそう語った東京大学大学院教授の染谷隆夫氏の研究が可能にするのは、ロボットに皮膚感覚を与えたり、人間の皮膚にピタリと張り付き生体情報を計測したりできるセンサー。

染谷氏は「伸縮性エレクトロニクス」という柔らかく伸び縮み自在なフィルム状の電子部品の開発で先進的な研究成果をあげてきました。

ロボットに皮膚感覚を与える「ロボットスキン」の実現を目指してきた染谷氏は、200万もの痛点があるといわれる人間の皮膚のセンシング精度を実現するため、膨大な数のセンサーからデータを感度良く呼び出す方式を導入。
この技術はウェアラブルデバイスの曲面タッチパネルなどで実用化されつつあります。

伸縮性が高く、クシャクシャにしても壊れない。
今では世界最薄(2μm)・最軽量(3g/㎡)を達成し、皮膚のような自由曲面上で温度や圧力をリアルタイムに計測することも可能にしました。この技術は電子人工皮膚としても有望視されています。

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「皮膚のように薄くて自在に伸縮する電子回路があれば、装着感のない生体センサーを開発でき、日常生活や運動中、病院などで常に体温や心拍数、血中酸素濃度を測ることができるようになると考えています。
健康管理を自分で行ったり、医療に役立てたりと多様な分野に応用展開の可能性が広がります。さまざまな潜在的なニーズを掘り起こし、商品化を実現していきたい」と抱負を述べられました。

常識にとらわれず、デジタル化によって失われた音・映像の復元に成功

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続く京都大学名誉教授の山本 裕氏は、デジタル化によって失われた自然界のアナログ情報の復元に取り組み、画期的な手法を世界に先駆けて導入した功績で、世界にその名を知られています。

デジタル信号処理では、音声や映像といった記録したい信号を一定周期ごとにデータとして記録し、さまざまなデジタル処理の後、点と点を繋いだ線の信号に戻し音声や映像として再生できるようになっています。
しかしこの処理によって点と点の間の情報は完全に失われてしまい、その復元は不可能だとされていました。

山本氏が打ち立てた新たな理論により、デジタル化によって失われた高音域を復元したり、また粗い画像をより鮮明にできるようになりました。
今では国際標準となったこの技術、必要以上に早い周期で大量のデータを記録する必要が無くなり、デジタル機器の性能向上に大きく貢献しています。

この理論に基づいた復元技術は山本氏の名前を取って「YYフィルタ」と呼ばれ、現在MP3プレーヤーや携帯電話、ボイスレコーダーなどに搭載されています。

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左が復元前、右が失われた色情報を復元し鮮明になった映像

「新しい理論を発表した当初は確かな実証データを提示しても、圧倒的な権威を持っていた科学理論に反するとしてなかなか受け入れてもらえませんでした」と語った山本氏。

「常識にとらわれていては新しい発想は生まれてきません。常識の壁を突き破るたゆまぬ努力が必要です」と、後に続く研究者にエールを送りました。

障がい者のためのアクセシビリティが、あらゆる人に役立つイノベーションを生み出す

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日本アイ・ビー・エム株式会社IBMフェローの浅川 智恵子氏は、14歳で失明して以来、さまざまな苦難や葛藤を乗り越えてきた自身の経歴を振り返りながら、アクセシビリティの技術開発がキーボードや文字認識、音声合成、音声対話など数々のイノベーションを生み出してきた歴史をひも解きました。

浅川氏自身も「視覚障がい者にWEBというすばらしい情報技術を提供したい」という強い気持ちで音声合成技術の開発に尽力し、世界初の実用的なWEBページ読み上げソフト「ホームページ・リーダー」などを開発してきました。
視覚障がい者のために開発したこれらの技術は今、浅川氏の想像を超え、あらゆる人に役立つ技術として多様な分野に広がりつつあります。

「ダイバーシティのスキルをうまく使えない社会は、マジョリティのスキルもうまく使えないのでは?」と問いかける浅川氏。
浅川氏らが開発を目指す「誰が・どこで・何を」しているかを認識し、人間に伝えるコンピュータ技術は、障がい者や高齢者の生活や仕事をサポートするだけでなく、あらゆる人に新しい体験を提供できるようになると言います。

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「ショッピングや観光、食などの文化もこれまでとはまったく違った楽しみになるかもしれません。その実現に音声合成技術から貢献したい」と決意を新たにしています。

多様な人々と出会い、支えられたからこそ今日の成果はあると明かした浅川氏は、「企業や業種を超え、ロボット工学や機械学習のインフラ整備など1社1組織ではできないことに挑んでいきたい」と結んで講演を終えました。

人の知見を機械に組み込む「Sensing & Control + Think」技術。

この技術の最新動向をお届けします。

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