【第2回】機械が人のやる気を引き出す未来を現実のものに(全3回) フォルフェウス成長の軌跡~ラリーする卓球ロボットから、AIで人と共に成長する存在に~

「人と機械が融和する未来」を体現した最新技術として、毎年進化を重ねているフォルフェウス。
「なぜ生まれたのか?」「今年はどんな進化を遂げているのか?」その全貌が、歴代の開発リーダーの口から明らかにされる。

第2回となる今回は、ラリーをすることから始まった卓球ロボットが直面した課題について。
求められるのは「人」の理解。
そして「人」の理解が進むほどに難しくなる「機械」を動かす技術。

フォルフェウスの進化、人と機械の新しい関係つくりは始まったばかりだ。

2代目フォルフェウスの開発リーダー 生雲 公啓 に聞く
-2代目フォルフェウスのコンセプト誕生に至る経緯。 進化のポイントや難しさをお聞かせください。

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中国のお客様に「人と機械の融和」を体験していただく中で、私たちが課題だと思った点が大きくは2点ありました。

一つは、どうやってロボットが何を考えているか分かるようにするか。
工場で動いているロボットや生産設備もそうですが、機械が何を考えているか分からない状況ってすごく怖いし、打ち解けられないし、信頼もできないですよね。
ロボットが何を考えているか、なんとか表出させないといけない。

もう一つは、いかに人をやる気にさせるか。プレーをしている人を見て気づいたんですが、スキルがなくてうまくラリーができない人は、卓球ロボットを楽しんでいなかったんですね。
「人と機械の融和」を考えたときに、人に目標を達成するモチベーションがないと、目標は達成できない、ということは分かっていたことではあったんですが、より現実の問題として理解することができました。

そこで、卓球台をディスプレイにして、フォルフェウスが次にどこに打ち返すか見えるようにしよう、というアイデアが生まれました。
これならフォルフェウスが考えていることも分かりますし、コーチのようにラリーが続かない人のサポートをしてあげられるんじゃないかと。

ただ、表示するといっても、どういう表示ならラリーをするプレイヤーのサポートになるか、開発の難しいところでしたね。

卓球がうまくても、そうでなくても、プレイヤーはボールを見ています。
実験を重ねる中で、卓球台は見られていないということが改めてよくわかりました。
そこで「卓球台に派手な細かい情報を出してもしょうがない。シンプルかつ動きのある表示が見やすいだろう。」と結論付けて、開発しました。

120-002.jpg返球する前に位置と軌道を教えるアシスト機能

ただ、分かりやすく表示することで、新たな別の課題も出てきました。
それは、返球位置の表示と実際にボールが落ちる位置の精度の向上です。
シミュレーション通りに返さないと意味がないので、ロボットの制御をどう変えたらいいのか?という壁にぶつかりました。

ポイントとしては、今まであまり見てなかったボールの回転に注目しました。
プレイヤーが打った球の軌道の変化から、回転の有無を見て、返球の仕方を変える、ということをソフトウェアで実現させました。

120-003.jpg赤色:プレイヤーが打った軌道を予測
青色:自身が返す軌道を計測

回転の見方というのは、技術的にはいろんなやり方があるんですが、工場で製品の位置を調整して加工する際に使われる、オムロンの画像センサーの技術に「ビジュアルフィードバック」という技術があるのですが、この技術を応用することにしました。

毎秒80回画像センサーでボールを見ながら、ボールの回転がない軌道を予測し、実際の軌道のパターンを比べる技術です。これで違いがわかりますよね。その違いから逆算してきっとこういう回転が、かかっているだろうと推測をして、回転を見ています。

こうして完成した2代目フォルフェウス

機械が人の能力や可能性を引き出すためには「機械」を動かす技術だけを磨いていては到達できない。
「人間」についての理解が求められる。
人が主役となる未来社会のために、機械が人の心を考える。大きな挑戦はまだ始まったばかりだ。

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